- 050101〜051231に開催された公式のイベント・クエスト
オリアクスとルーチェの「恋のドキ☆ドキ Attack!〜バレンタイン大作戦〜」 †
- 050214〜050215
- 「血のバレンタイン」と呼ばれる
少年ユンの物語〜Southern Gate Keeper 誕生悲話〜 †
- 050318〜050408
- 第1期ストーリーイベント 第一章、正式サービス移行記念作品
- ハドソン『Master of Epic』運営チーム 実施
- 第一部(オープンβテスト)050318〜050327、第二部(正式サービス)050401〜050408
- CAST
- ユン、オリアクス、ルーチェ、キング オラージュ、ウォルフガング、イーゴ
●あらすじ
「一緒に・・・来るか?」
男の問いかけに、少年は小さく頷くと、おそるおそる手を差し出した。
記憶を失った少年【ユン】と、邪神を崇めるマブ教のギルド・マスター【オリアクス】。
2人の物語は、深い森の片隅での偶然の出会いから始まる。
マブ教の本拠地で生活を始めたユンは、少しずつ日々の生活に慣れ、元気を取り戻していった。
だが、失った過去の記憶は戻らない。
「自分は何者なのか…?」
彼は記憶のカケラを探し求めて、事あるごとにムトゥームを抜け出すようになる。
オリアクスは、そんなユンの様子を気にかけつつも、目前に迫る【マブ神祭】の準備に追われていた。
やがて始まる、マブ神の祭。
血の礼拝を行うたびに、ダイアロス全土に闇の気配が膨れ上がってゆく。
城下町ビスクを拠点とするラル・ファク教などの各地の勢力は、その力に抗うために立ち上がるが、
闇の力は日増しに強まるばかりだった。
時を同じくして、ユンの心に変化が訪れ始める。失った記憶が、少しずつ戻って来たのだ。
―そして物語は、ダイアロス全土を巻き込み、意外な展開を見せて行く。
■Scene.01. ユンという名の少年
+
| | ※ストーリー
|
【 神託 】
マブ神の声が、響き渡る…。
…過去の見えざる存在
…混沌の黒い翼
…闇よ
…使者をかの地へ
…新たな魔を
…混沌の…
…混沌の……
(なんの事であろう?)
いぶかしみながらも、マブ神祭を執り行うと流布するイーゴ。
…神託からほどなくして、オリアクスが一人の少年をムトゥームへと連れ帰った。
「なるほどな…」
イーゴは視線を下げ、静かにほくそえんだ。
【 少年 】
目を開くと、緑の樹海が広がっていた。
(ここはドコだろう?)
少年はゆっくりと立ち上がり、辺りを見回す。
(――行かなくちゃ)
頭はそう急かすのに、どこへ行くべきだったのかを思い出せず、少年は困惑する。
(僕は…誰?
ここは…ドコ?
何を…していたの?)
思い悩む少年の背後で、腹を空かせたオルヴァンが息を忍ばせていた。
【 独りと独り 】
(新月の晩であれば、たまには散歩も悪くない)
墓地を抜け、アルビーズの森へとやってきたオリアクスは、自分がイーゴに拾われたのもこの森だった事を思い出す。
世の中の一切合切が面白くもなんともなく、手当たり次第に突っかかっていたあの頃――。
――と。
オリアクスは、次第に高まっていく何者かの息遣いを耳にし、周囲を見回した。
前方には、ぺたりと座り込んだ少年と、獲物を狙うオルヴァンの瞳……。
(――短い生涯だったな、坊主……)
口中でつぶやき、踵を返すオリアクス。
……だが、どうも気にかかる。
(ここで会ったのも、マブ神の導きかも知れん)
そう思い直した彼は、いつでも魔法を放てるよう精神を集中させ、少年へと歩み寄る。
オルヴァンは、彼の気に怖気づき、ゆっくりとその場から立ち去った。
少年の前にしゃがみこんだオリアクスは、
どこから来た?
とも、
両親は?
とも聞かなかった。
ただ一言だけ
「来るか?」
と問うた。
黙って手を差し出す少年。
これが、全ての始まりだった。
【 ユン 】
少年は、記憶をもたなかった。
名も、もたなかった。
オリアクスは彼をムトゥームへ連れ帰り、「ユン」と名付けた。
そして、マブ教の歴史やイーゴのことを語って聞かせる。
ユンはそれらの知識を次々と吸収し、次第にオリアクスになついていった。
(闇の道へ……引きずり込んでやるか)
オリアクスは密かに口角をあげる。
最初はオリアクスの傍でじっとその仕事振りを見ていたユンだったが、記憶は一向に戻らない。
その事実は、日を追うごとに少年の中で大きな不安へと姿を変えていった。
(行かなくちゃ……でも、ドコへ?)
(お外で色んなものを見たら…何か思い出せるかな?)
ユンはオリアクスの目を盗み、ムトゥーム地下墓地の外へと足を踏み出した。
今日もマブについて語ってやろうと、ギルドの仕事の合間にユンを呼びつけるオリアクス。
しかし、彼の姿はどこにもない。
(あんの坊主…。せっかく助けてやったってのに、勝手に死なれては困るぞ)
――オリアクスはユンを連れ戻すため、方々へと指示を飛ばした。
|
クエスト名 | 発生条件 | 達成条件&Tips | 報酬 | 備考 |
---|
ユンを探せ!(仮) | オリアクスがアルビーズの森で発見し、ムトゥームへと連れてきた少年――ユン。記憶を失くしているユンは、その断片を探すために、ムトゥームをたびたび抜け出します。彼がムトゥームを離れると、オリアクスから皆さんへ「ユンを探して欲しい」というお願いがなされます。あなたは、各地を転々とするユンを見つけることができるでしょうか……? | ・オリアクスのアナウンスが流れたら、各地に現れるユンを探します。 ・ユンを見つけたら、【ユン】と【見つけた】という言葉を、【ユンの目の前(Say)】で伝えてください。 | ユンのリュックサック | |
---|
■Scene.02. マブ神祭 -前夜祭-
+
| | ※ストーリー
|
【 異変 】
一生懸命つくったリュックを抱きしめ、ユンはここ数日間のことを思い返していた。
元気に川を泳ぐ、魚の親子。
眠気を誘う、森の木漏れ日。
頬を撫でる、優しい風――。
まだ何一つとして思い出すことはできなかったが、それらは彼の心に新鮮な感動を与えていた。
(今日は何をしよう?)
(明日はドコへ行こう?)
ユンの期待はどんどん膨れ上がっていく。
(よし!今日は海を見に行ってみよう!)
オリアクスがギルドメンバーに指導している隙を見計らい、ユンは再び外へと飛び出した。
ミーリム海岸で潮風に吹かれていたユンは、自分を呼ぶ声に振り向いた。
どうやら、オリアクスがユンを連れ戻すために差し向けた、冒険者らしい。
記憶のカケラを見つけられずにいるユンは、自分が作ったリュックをそっと差し出
した。
「もう少し、お外にいたいんだ…。これをあげるから、オリアクス兄ちゃんにはナイショにしてくれないかな?」
ゾウの形をした、つぎはぎだらけのリュックサック。
愛くるしいその瞳に見つめられ、冒険者達は困ったように顔を見合わせた。
「あ…あれ? なんだろう…頭…クラクラする…っ…」
突然の頭痛にふらつくユン。
――そして、その直後。
「な、なんだコイツら! アッチ行けよっ! お…お兄ちゃん、お姉ちゃん、助けて!」
腐敗した体で近付いてくる魔物に怯え、ユンは冒険者たちの背後でうずくまった。
勇敢な冒険者たちに助けられ、ユンはようやく顔をあげる。
頭の痛みは、いつの間にか消えてなくなっていた。
「お兄ちゃん、お姉ちゃんありがとう…ケガしなかった?
ココは危険みたいだから、どこか別のところに行ってみるね」
しかし、その次に訪れた場所でも、また、その次の場所でも……
それらはまるでユンを追ってきたかのように、姿を現すのだった。
【 マブ神祭 -前夜祭- 】
――その日。
ムトゥーム地下墓地では、教祖イーゴ(Igo)の命により、マブ神祭の準備がすすめられていた。
マブ教徒たちは、禁断のレシピとして封じられていた暗黒料理の一つ
――「レッド スープ」の解放に歓声をあげ、つぎつぎと生贄を血祭りにあげてゆく。
祭へ向けて、闇の力は日増しに高まって行くばかり…。
ミーリム海岸と、ネオク高原では、漆黒の闇に紛れ、腐り果てた闇の生物たちがうろつき回るようになり、更にその翌日には、アルビーズの森とレクスール・ヒルズも、同じ現象にみまわれた。
ダイアロス各地で相次ぎ起こる不可解な現象を人々が噂し始めた頃、その異変がただならぬ悪意を帯びていることを敏感に察知した者達がいた。
ラル・ファク神に信仰を捧げる、アルケミスト・ギルドの長、ルーチェ。
エルガディンの民を率いる、キング オラージュ。
アルビーズの森でフォレスター達を束ねるウォルフガング。
3人はそれぞれの立場から、みなに警戒を呼びかけた。
ダイアロス全土が不穏な空気に包まれる中、 ユンは不可解な現象に怯えながらも、記憶を取り戻すため外出を繰り返した。
そして、その度に闇の生物が彼を取り囲むのだった。
(なんだろう、気持ち悪いよ……)
ユンの瞳が、未知の恐怖に揺れ動いた。
|
●このとき進行していたイベント内容
■ マブ神祭 - 前夜祭 ■
教祖イーゴ(Igo)より、マブ神祭を執り行うよう仰せつかったオリアクス。
その準備のため、前夜祭が開催されることになりました。
祭りに向け、マブ教徒たちは供物――「レッド スープ」作りに励みます。
一方、血の匂いに誘われた闇の生き物たちが、各地に姿を現し始めているようです。
クエスト名 | 発生条件 | 達成条件&Tips | 報酬 | 備考 |
---|
ユンを探せ!(仮) | オリアクスがアルビーズの森で発見し、ムトゥームへと連れてきた少年――ユン。記憶を失くしているユンは、その断片を探すために、ムトゥームをたびたび抜け出します。彼がムトゥームを離れると、オリアクスから皆さんへ「ユンを探して欲しい」というお願いがなされます。あなたは、各地を転々とするユンを見つけることができるでしょうか……? | ・オリアクスのアナウンスが流れたら、各地に現れるユンを探します。 ・ユンを見つけたら、【ユン】と【見つけた】という言葉を、【ユンの目の前(Say)】で伝えてください。 | ユンのリュックサック | |
---|
■Scene.03. マブ神祭
+
| | ※ストーリー
|
【 マブ神祭 第一夜 】
マブ教徒たちが一堂に会すなか、オリアクスの嬉々とした声が地下墓地に響き渡る。
「準備はいいかー!
イーゴ(Igo)様より開催の旨を仰せつかった。
今日から3日間、マブ神祭を行う!」
マブを、イーゴを、オリアクスを称える声が、怒号のように発せられた。
信者たちは、ムトゥームの祭壇や各地のソウル・バインダーを介し、邪神へ祈りを捧げてゆく。
…それは、前夜祭で準備したレッドスープを飲み干すという、血塗れた儀式。
「いいぞ、お前たち。ふかい暗闇へ堕ちていくような絶望感を、楽しもうじゃないか…」
高まりゆく闇の気配を感じ、オリアクスは邪悪な笑みを浮かべた。
――やがて、血の礼拝により召喚されたマブの手先が、各地へ襲撃を行い始めた。
昨日までのアンデッドとは比較にならない、純粋な闇の生物が旅人へと襲いかかる。
ビスクではルーチェが、
ネオクではキング オラージュが、
アルビーズの森ではウォルフガングが、
それらを撃退するよう指示を出す。
一方、どこへいってもアンデッドに囲まれるようになったユンは、オリアクスの隣に寄り
添って、じっとしていた。
記憶は取り戻したかったが、外へでかけるのが怖くなってしまったのだ。
「お前も俺たちの仲間なら、ゾンビごときを恐れるんじゃない!…やつらは、お前に攻撃
なんぞ、してこんだろう?」
オリアクスの言葉に、ユンはうつむいた。
(だって…怖いし、気持ち悪いんだもん……)
「マブ神祭の気配を感じて、待ちきれずにでてきたに過ぎん。お前も礼拝を捧げ、こころ
を闇に染めろ」
(兄ちゃんのそばなら、きっと大丈夫。怖いことなんか、何もないんだ)
しばらくムトゥームにいよう…ユンはそう、心に決めたのだった。
【 マブ神祭 第二夜 】
血の礼拝が続くムトゥーム地下墓地――。
礼拝の力は闇を揺さぶり、[ミーリム海岸]と[ネオク高原]に、禍々しいマブ神のオブジェクトを打ち立てた。
日が沈むと、オブジェクトから湧き出してくる、マブの手先たち。
強烈な闇の力は、ラスレオ大聖堂やネオク・ラングにまで及び、アンデッド達が町を徘徊しはじめていた。
ビスクではミストを筆頭に、ラル・ファク神への祈りの儀式が始められていた。
ルーチェはその間も、街を守るよう懸命に呼びかけ続ける。
また、ネオク高原でもキングオラージュが民をまとめ、魔物の撃退に尽力していた。
ミクルが取り仕切る竜神への祈りの儀式も、着々と進んでいる。
各地で異変が起こっていることを知ったウォルフガングもまた、闇に屈することの無いよう、森の仲間たちを奮い立たせていた。
一方、ユンは祭壇を磨きに礼拝堂へと向かっていた。
祭の手伝いがしたくて、オリアクスから仕事をもらったのだ。
各地へ祈りを捧げにいっているのか、教徒の姿は見当たらない。
――かわりに、見たことのない小さな背中が目に入った。
自分と同じ子どもに違いない。
ユンは親しげに歩み寄る。
「だぁれ?お祈りしにきたの?」
声をかけると、その人物はゆっくりと振り向いた。
そしてユンの姿を認め――にやりと笑み崩れる。
とたんに、ユンは祭壇に背をむけ、駆け出していた。
ナゼかはわからなかったが、逃げなければいけない。そう、頭が警告を発していた。
口の中がカラカラで、胸が締め付けられるように苦しい。
(僕、あの人のコト…知ってる?…誰?…誰っ?)
(コワイ、コワイ…でも、何で…?)
(何で僕、逃げてるの…? あのヒトは、誰?)
ユンは混乱を抑えきないまま、オリアクスの元へと戻った。
「兄ちゃん、兄ちゃん、あのね、僕……!」
ローブの袖をギュッと掴み、ユンはオリアクスの注意をひく。
しかし、彼は礼拝の指導をするのに忙しく、ちらと彼を見て、
「すまんが、今はかまってやれん」
一言、そう告げただけだった。
…そっと、手を離すユン。
(僕…僕、どうしたらいいんだろう? あのヒトは、誰だったんだろう?
…兄ちゃん、僕ね、なんだかすごくコワイんだ…)
真ん丸い瞳が、みるみる潤んでいく。
――しかし、オリアクスがその涙に気づくことは無かった。
【 マブ神祭 第三夜 】
二晩の祈りの力を得て、ダイアロスを覆う闇はなおも深まってゆく。
祈りの力に呼応するように、[レクスール・ヒルズ]と[アルビーズの森]にも、禍々しいオブジェクトが姿を現した。
どろどろに腐った臓器を引きずり、ビスク中央とランダル洞窟、ネオク・ラングをゾンビが埋める。
夜な夜な繰り返されるマブの手先の襲撃は、強まる一方だった。
この異変の原因を突き止めるため、それぞれの勢力は動き始めていた。
ミストは寝ずに、ラル・ファク神へと祈りを捧げ、キング オラージュは竜神への祈りの儀式に力を入れる。
ウォルフガングも各地へ偵察を送る傍ら、決死の撃退を続けていた。
(魔物を召喚しつづけている禍々しいオブジェクト――[マブズ・スピリット]さえ破壊できれば!)
……しかし、濃い闇の気配に包み込まれたそれは、一切を拒絶していた。
一方、祭だとはしゃいでいたユンは、火が消えたように大人しくなっていた。
ときどきイヤイヤするように頭を振っては、不安そうな目でオリアクスを見つめる。
その様子を気にかけつつも、オリアクスは知らぬ振りを通していた。
(お前は、未来のマブ教徒。悩みぐらい1人で解決してみせろ…!)
――祭は、今宵で最後。
マブ教徒たちは、我先にと争い、1度でも多く血の礼拝を捧げようと、各地を奔走していた。
|
●このとき進行していたイベント内容
■ マブ神祭 - 第一夜 ■
教祖イーゴ(Igo)より、ついに【マブ神祭】の開催が言い渡されました!
準備しておいたレッド スープを次々に飲み干し、邪神に血の礼拝を捧げるマブ教徒たち。
祭は、三夜に渡る祈りの儀式をもって完成されます。
礼拝を重ねるごとに、ダイアロス全土に膨れ上がる闇の気配……。
血の匂いに引き寄せられたマブの手先が、生者を死へといざないます。
■ マブ神祭 - 第ニ夜 ■
教祖イーゴ(Igo)より、ついに【マブ神祭】の開催が言い渡されました!
準備しておいたレッド スープを次々に飲み干し、邪神に血の礼拝を捧げるマブ教徒たち。
祭は、三夜に渡る祈りの儀式をもって完成されます。今日は、その第二夜です。
一夜目の祈りが効を奏し、[ミーリム海岸]と[ネオク高原]には、禍々しいオブジェクトが姿を現しました。
そこからは、夜な夜なマブの手先が召喚され、生者へと襲いかかっています。
ダイアロス全土に膨れ上がる闇の気配……。
――止める手立ては、いまだ見つかりません。
■ マブ神祭 - 第三夜 ■
教祖イーゴ(Igo)より、【マブ神祭】の開催が言い渡されてから二日が経過しました。
準備しておいたレッド スープを次々に飲み干し、邪神に血の礼拝を捧げるマブ教徒たち。
祭は、三夜に渡る祈りの儀式をもって完成されます。今日は、その最終夜です。
[ミーリム海岸]、[ネオク高原]、[アルビーズの森]、[レクスール・ヒルズ]には、祈りの力を受け、
禍々しいオブジェクトが姿を現しました。
そこからは、夜な夜なマブの手先が召喚され、生者へと襲いかかっています。
ダイアロス全土に膨れ上がる闇の気配……。
――止める手立ては、いまだ見つかりません。
■Scene.04. 闇を討て!
+
| | ※ストーリー
|
【 ラル・ファクの奇跡 】
3日目の晩に捧げられた祈りは、各地の【マブズ・スピリット】に更なる力を与え、街中にまでその力を及ぼし始めた。
昼夜を問わず、繰り返しを襲撃を行う、マブの手先たち――。
安息の時は、遠のいていくばかりだった。
一方、ラル・ファク神への祈りの儀式を行っていたミスト達は、ようやく、異変の原因を掴みかけていた。
しかし、地上を覆う闇の気配にさえぎられ、聖なる祈りは天に届かない。
ラスレオ大聖堂、ミーリム海岸、レクスール・ヒルズ。
そこに召喚される手先を倒し、闇の気配を薄めるしか、方法はない。
昼夜を通して続けられた手先との激闘の末、祈りはついに、天へと達する。
ラル・ファク神の神託により、この異変はマブ教徒が引き起こしたものだという事を知るミスト達。
聖なる祈りは、マブに対抗する光へと姿を変え、ミーリム海岸の【マブズ・スピリット】を包み込んだ。
打ち消しあうようにぶつかり合う、闇と光。
…やがて、強固と思われた闇の守りは霧散し、脆い本体が露呈した。
マブの手先が[ミーリム海岸]と、[ラスレオ大聖堂]前で暴れまわる中、スピリットを破壊するための、決死の戦いが続く。
――そして、ついに。
ミーリム海岸の【マブズ・スピリット】は砕け散り、マブの手先もろとも、消滅したのだった。
ミーリム海岸に、暖かい陽光が降り注ぐ。
疲れを忘れ、冒険者たちは歓声をあげた。
竜神の神託により、ミーりム海岸の【マブズ・スピリット】が壊れたことを知ったキング オラージュは、手先の討伐と、儀式の強化をネオクの民に命じる。
また、アルビーズの森でも、両者の祈りを高めるため、一丸となってマブの手先を無に帰していくのであった。
【 闇からの逃亡 】
(コワイ…コワイ…!あれは誰だったんだろう?)
祭の最中見かけた、見知らぬ人物…。
彼の笑みが、頭から離れない。
彼を見たときの恐怖が、心から離れない。
それが誰なのかはわからないまま、恐れる気持ちばかりが膨らんでゆく。
(どうしよう…ここにいたら、またあの人に会うかもしれない)
ユンは、アンデッドたちを恐れる気持ちを押さえつけ、再びムトゥームを飛び出した
のだった。
どこからともなく現れたマブの手先に追われ、ユンは各地を逃げ回る。
その間、頭に断片的に浮かんでは消えてゆく、記憶のカケラたち…。
ユンは無くした記憶を取り戻しかけ、錯乱状態に陥っていった。
(ムトゥーム地下墓地に似ている場所…、深くて、暗くて先が見えない…)
(あれは、ドコだろう…?そうだ、オレ…僕、逃げてきたんだ…嫌だから)
(血を見るのが、こわい、んだ…だから逃げてきたんだ…、ずっと遠い所から…)
(誰も、助けてくれない。僕は、闇の中で一人ぼっち…。このまま死んだ方がマシだ!って。そう思ってたんだ…)
ユンが、デスナイトやスカルパスに追われているらしい…。
その事実を耳にしたオリアクスは、ユンを見かけたら戻るように言ってくれ、とマブ教の同志に言い渡した。
(何か悩んでいたようだが…話を聞いてやればよかったか)
そんな思いが、彼の心中に浮かんだが、【マブズ・スピリット】が破壊された今、ユンに構っている余裕はない。
【 開かれた扉 】
その翌日――。
ミーリム海岸に続き、各地の【マブズ・スピリット】を覆っていた、闇の気配が霧散した。
各地の精鋭たちは、マブの手先と死闘を繰り広げながら、全力で【マブズ・スピリット】を破壊しにかかる。
3地点に残されていた闇の結晶は、次々に砕けてゆく…。
やがて、ダイアロス中を恐怖に陥れたマブの手先は、【マブズ・スピリット】と共に、跡形もなく姿を消した。
「祭は…失敗だ」
オリアクスは、唇を強く噛んだ。ビスクも、ネオクも、アルビーズも…壊滅的な打撃は受けていない。
――しかし。
地を揺るがすようなイーゴの声が、【祭の成功】を告げたのだ。
「闇の力は存分に高まり、【混沌の扉】が開かれた!【使者どもが、小僧を連れ戻しにやってくるぞ】!」
オリアクスは、何のことだかわからずに、首を捻る。
(連れ戻す小僧とは、どいつのことだ……?)
一瞬ユンの顔が頭をよぎったが、「まさか…な」オリアクスはその考えを打ち消した。
|
●このとき進行していたイベント内容
■ 闇を討て! ■
マブ神祭は、とどこおりなく終了しました。
三日間の礼拝の効果が、[ミーリム海岸]、[ネオク高原]、[アルビーズの森]、
[レクスール・ヒルズ]のシンボルに流れ込み、強い闇の輝きを放っています。
マブの手先はついに町の中にまで姿を現し、昼夜を問わず、生者を死へといざない始めました。
一方、ラル・ファク神への祈りを捧げるミストは、この異変の原因をつかみかけていました。
マブの手先を滅した分だけ、闇の力は薄まり、祈りは天に届きやすくなります。
ルーチェの呼びかけに、冒険者達は武器を掲げ、光を取り戻すことを誓い合うのでした。
また、ムトゥーム地下墓地では、何者かに怯えていた「ユン」が、姿を消しました。
オリアクスは彼を気にかけつつも、祭の成果を見定めるため、ギルドを離れることができません。
――ダイアロス全土を覆う闇の気配……。
マブ教徒たちの邪悪な笑みを、消しさることはできるでしょうか?
■Scene.05. 混沌の使者
+
| | ※ストーリー
|
【 決意 】
【混沌の扉より、小僧を連れ戻しに、使者が現れる】。
イーゴが残した言葉は、オリアクス、そしてルーチェの心に波紋を広げていた。
連れ戻される小僧とは、ユンのことではないのか?
何度ぬぐっても、その疑念が頭を離れないオリアクス。
一方、ビスク周辺に悪しき気の高まりを感じたルーチェは、混沌の使者の存在を恐れ、ラル・ファク神に祈りを捧げていた。
そんな中、デスナイトなどのマブの手先に追われつづけていたユンが、ラスレオ大聖堂へ助けを求めて転がり込む。
ルーチェは少年の疲れきった様子に驚きつつも、奥の部屋へと運んだ。
そして、薬湯を口に含ませ、休ませる。
ユンがラル・ファク教に保護されている――。
[暗使]メンバーより報告をうけたオリアクスは、あまりの出来事に目を瞬く。
(デスナイトに襲われない場所を…と、考えたか)
しかし、どうしてムトゥームへ戻ってこないのか?
その一点が、どうしてもわからなかった。
ユンが感じていた恐怖を、オリアクスは未だ知らずにいたのだ。
――その晩。
ビスクの周辺では、マブ神祭の時とは異なる強烈な気が渦巻いていた。
ラスレオ大聖堂で昏々と眠リ続けていたユンは、その気配を察して飛び起きる。
(イヤだ…! アイツ等が、来る――!)
いきなり騒ぎ始めたユンを落ち着かせようと、ルーチェは彼を力いっぱい抱きしめた。
(この迷い子も、不穏な気配を感じ取っているのでしょうか…?)
ルーチェの胸のざわめきは、次第に大きくなってゆく。
ビスク周辺で【混沌の使者】が現れることを感じ取ったオリアクスは、ユンを迎えに行くため、立ち上がった。
(…やつらが連れ戻そうとしてるのは、やはり――)
イーゴが混沌の使者に号令をかける直前。
オリアクスは間一髪、ビスクへと到着した。
彼の姿を見つけたユンが、助けて欲しいと泣き叫ぶ。
信じたくない話ではあったが、オリアクスの予感は的中していた。
混沌の使者が狙っているのは、まぎれもなくユンだったのだ。
どうすべきか、逡巡するオリアクス。
――そして。
「お前たち、ユンを守ってやってくれ! ヤツは未来の暗使! 俺たちの同志だ!
イーゴ様は思い違いをされている。
ユンは、闇に怯えるただの子どもでしかないッ!」
さらに、ルーチェに向き直ると、手を組むことを提案する。
「お前たちは、ビスクを守るため。
俺たちは、ユンを助けるため。
混沌の使者どもと、一戦交えようじゃないか…!」
ルーチェは元よりそのつもりだ、と答えを返し、ラル・ファクの信徒へ協力を要請する。
ユンを守ろうとするオリアクスを見ても、イーゴは余裕の笑みを浮かべたままだった。
「混沌の使者どもは、扉が開いている限り、小僧を追っていくらでもやってくる。
その絶望、その恐怖――それらは全てマブ神のお力となる!
オリアクス、お前もマブ神に絶望を捧げるがいい!」
【 決戦…そして… 】
イーゴの号令の元、混沌の使者――Chaos Age の生物たちが、ビスクの街中と周囲に次々と降り立った。
そして、皆がラスレオ大聖堂へと歩みを進める。
一致団結した冒険者達は、ミーリム海岸で、レクスール・ヒルズで、街中で、Chaos Age の生物と渡り合う。
次から次へと出現する魔にくじけず、彼らは戦いつづけた。
――そして、静寂が訪れた。
勝利した!
喜ぶルーチェとオリアクスだが、ユンは小さな頭を抱え込み、教会の隅で震えていた。
「まだだ…兄ちゃん、まだ来るよ、終わってなんか無い…!」
ユンの言葉を肯定するかのように、イーゴの声が響き渡る。
「小僧!貴様が戻るまで、ヤツ等は何度でもやってくる。
何度も! 何度も! 何度もだ!
まだ血をみたいか! まだマブ神へ恐怖を捧げたいか! 」
礼拝堂にこだまする、悲鳴。
あちらこちらで血が流れ、人が倒れてゆく。
終わりのない戦い。
果ての無い、戦い…。
ユンはゆっくりと立ち上がると、弱々しく頭を振った。
そして、ゆっくりとラスレオ大聖堂の外へ、歩みを進める。
「優しいみんなが倒れてく、そんなのイヤだ…!」
目の前にいる巨大な鎌を担いだ混沌の使者が、虚ろな瞳でユンを見ていた。
彼は1度、強く目を閉じると、決意したように顔を上げた。
「Chaos Age へ、帰る」
……と。
オリアクスが驚いた目でユンを凝視する中、彼はゆっくりと自分のことを語り始めた。
「オレ…忘れていたことを、全部おもい出したよ。
オレは、本当はココにいちゃいけないはずの存在…。
…Chaos Age から逃げ出してきたんだ。
どこまでいっても果てのない、暗闇がコワかった。独りぼっちで、血の匂いに包まれてた…!
やらなきゃいけない事があったのに、それがコワくて、コワくて…時空の狭間へ飛び込んだ…」
混沌の使者がユンを乱暴に担ぎ上げる。
「たくさん迷惑をかけてごめんなさい。
…でも、本当に楽しかった。
オレは…ううん。僕、兄ちゃんたちと過ごした毎日のこと…絶対に忘れない」
使者が、地を蹴り舞い上がった。
オリアクスは風に煽られながらも、ユンを掴むもうとして手を伸ばす。
「――ユンッ!待て、ユンッ!!」
ユンは、泣きそうな顔で、じっとオリアクスを見ていた。
「どうして…記憶を取り戻しちゃったんだろう。
どうして、このままでいられなかったのかな…?」
ユンは精一杯涙をこらえ、オリアクスを見つめつづける。
やがて、その姿は使者と共に、空へ吸い込まれていった。
「【混沌の扉】は閉じた! これで、もう逃げられまい…!
新たな闇が、覚醒するぞ…!
――マブ神に、栄えあれ!」
イーゴの声が、静かな街に響き渡った。
オリアクスは、やりきれない思いで、ユンが消えた空を睨み続ける。
「おかしいとは思っていた。
なぜアンデッドが寄ってくるのか、デスナイトどもが追い掛け回しているのか……。
だが、こんな別れ方はあるか?
…立派なマブ教徒に育てるため、俺が何時間説教したと思っているッ!」
空を掴んでいた手を引き寄せると、オリアクスは肩を落とした。
「Chaos Age に何がある…?
お前は、そこに何を残してきたんだ。
お前は未来のマブ教徒、未来の暗使。
なのに、俺が祭を成功させて、送り返しちまったのか…」
ルーチェはオリアクスの横顔を見つめ、そして空を見上げた。
Chaos Age へと、思いを馳せながら…。
|
●このとき進行していたイベント内容
■ 混沌の使者 ■
デスナイトやスカルパスに追われ続け、逃げ場を失ったユン。
記憶を取り戻しつつある彼は、祭の最中に見かけた人物との遭遇を恐れ、ムトゥームへ帰ることができません。
どこかに隠れなくては。そんな状況の中、何度か足を踏み入れたことがある街――ビスクのことを思い出します。
「あそこなら、助けてくれるかもしれない…!」
彼は気力を振り絞って、ラスレオ大聖堂へと向かいます。
ラル・ファク教は、疲れ果てたユンを受け入れ、保護しました。
ルーチェは彼に薬湯を飲ませ、奥で休ませます。
――その頃【ビスクの周辺】では、闇の気配が高まりつつありました。
・ビスクの周辺で、闇の気配が高まっています。
・腕に自信のある方は、アナウンスに従って、ビスクの周辺を訪ねてみましょう。
■Scene.06. 混沌の地へ
+
| | ※ストーリー
|
【 回想 】
オリアクスは、ユンを守れなかったことを悔いていた。
歯車が狂い始めたのは、いつ頃からだった?
オリアクスは記憶をたどる。
(――そう、マブ神祭。あの頃から、坊主の様子がおかしくなった。)
何者かに怯え、思い悩んでいた。
しかしオリアクスは、祭のことで忙しく、彼に構っている余裕がなかった。
加えて、暗使の一員となるならば、1人で解決してみせろという思いも多分にあった。
だがそれは恐らく、ユンの手に負えることではなかったのだ。
(あの頃から、坊主の笑った顔を見なくなったな…)
アルビーズの森で拾ったとき、恐る恐る……でも、しっかりと手を握ってきたユン。
いつか兄ちゃんにも作ってあげるね!
つぎはぎだらけのリュックを、得意げに見せたユン。
説教をするたび、真剣な表情で聞き入っていたユン。
…いつの間にか、そんな毎日を新鮮に思っていた自分がいる。
(祭は仕組まれていたとしても、坊主との出会いは偶然だった。
…そう思いたいもんだな)
ユンがChaos Age で果たさねばならないこととは何か――?
曇天を見上げ、オリアクスは口を一文字に引き結んだ。
アルビーズの風は、冷たい。
一方、ルーチェもまた、心に沈んだ澱を感じ取っていた。
ラスレオ大聖堂にユンを迎え入れた時のことが、脳裏に浮かび上がってくる。
酷く疲れた表情に、くたびれた衣服…そして、強い怯えを宿した無垢な瞳――。
魔物に追われていると聞き、ルーチェは胸が痛んだ。
一体、どれだけの恐怖を味わい逃げつづけたのだろうか。
少年が放つ、聖とも邪とも付かない雰囲気に気付きながらも、ルーチェは彼を保護した。
追い返すことができないくらい、ユンは弱っていたのだ。
(迷える子羊を、救うことができませんでしたね…)
傍にいた者だからこそ感じるやり場の無い悲しみが、ルーチェの心をいっぱいに満たしていた。
【 誰がための旅立ち 】
――翌日の晩。
オリアクスは暗使ギルドの面々を呼び集めた。
そして、Chaos Age へ向かうことを、皆の前で宣言する。
「お前たちには、正直に話しておこう。
…俺はユンを連れ戻すつもりだ。
あの坊主が、Chaos Age で何をしているのか?
それは、わからん。
マブ神祭を行ってまで、送り返さなければならなかった理由とは?
それも、わからん」
周囲は静まりかえっている。
「だから、俺はその答えをこの目で確かめに行く。
そして、ユンが助けを必要とするのならば、手を貸そう。
ヤツは未来のマブ教徒、未来の暗使。
…独り、闇の底に捨ておくわけにはいかん。
それが、暗使ギルドを担う、俺の役目だ」
反論する者はなかった。
1度こうと決めたら、テコでも動かない彼の性格を知っていたからだ。
「しばらくの間、留守を頼む」
そう言い残し、オリアクスは地下墓地を後にした。
――オリアクスがChaos Age へ向かったことを聞き知ったルーチェは、見透かしていたかのように小さく微笑んだ。
「迷える子羊のことを、案じていたのでしょう。
信徒を想うその気持ち…私にも理解できます」
報告をくれたアルケィナのメンバーにそう告げると、身支度を始める。
「…私も、あとを追う事にいたしました。
ユンを連れ戻す、手助けをしたいと思います」
信徒たちが彼女の身を案じて次々と集まってくる。
いずれも、ユンを助けようと使者との戦いに身を投じた者たちばかりであった。
「ユンが、ラスレオ大聖堂へと逃げ込んで来たあの日…、彼から聖とも邪ともとれない、不思議な気配を感じました。
…ですが、彼は自らのそれに怯え、悩み、苦しんでいたようです。
…イヤだ、コワイと泣き喚いていた声が、表情が、幾度もよみがえって来ます。
あんなにも嫌がっていたというのに、救いの手を差し伸べることができませんでしたね…」
みな、真剣な表情で聞き入っている。
「…ミスト様も、ユンのことは元よりChaos Age で何が起こるのかを、懸念されているご様子でした。
危険な旅になるかもしれません。
皆さまには、ギルドのことをお願いします」
共にChaos Age へ行くと、言い出さんばかりだった面々は、ルーチェの真剣な表情を見て、押し黙った。
…そして、彼女の旅立ちを黙って見送ったのである。
オリアクスとルーチェ。
2人は、Present Age から姿を消した。
深い闇の底に囚われたユンを、助け出すために…。
|
●このとき進行していたイベント内容
■ 混沌の地へ ■
混沌の扉の向こうへ消えたユンを助けるため、オリアクスとルーチェがギルドを後にしました。
[暗使]と[アルケィナ]では、留守を任された新しいマスターがギルドを切り盛りしています。
――オリアクスとルーチェは、深い闇の奥底からユンを救い出すことができるのでしょうか?
・新しいギルド・マスターを訪ねてみましょう。
[暗使] Equa / [アルケィナ] Fresa
■Scene.07. 幻影
+
| | ※ストーリー
|
【 幻影 】
雷鳴が轟き、生暖かい血の雨が地面を赤黒く染めてゆく――。
ユンに続いて、オリアクスとルーチェが旅立って後、Present Age の各地で異変が起き始めていた。
やがて、逃げ惑う人々の中から、3人の幻影を見たという者が出始める。
「翼…見てる」
「白い…」
「…Chaos」
「闇…」
幻影と化した彼らは、一様に何事かを口走っては雨の向こうへ消えてゆく…。
それは、Chaos Age で起きていることなのか、それとも心中の叫びなのか……?
――全ての結末は、Chaos Age に眠っているようだった。
|
●このとき進行していたイベント内容
■ 幻影 ■
混沌の扉の向こうへ消えたユンを助けるため、オリアクスとルーチェがギルドを後にしました。
[暗使]と[アルケィナ]では、新しいギルド・マスターが2人の留守を守っています。
そんな中、各地で奇妙な現象が起こり始めました。
オリアクスやルーチェ、ユンの姿をした幻影がうろつき、血の雨が地面を濡らすのです。
――時空を越えるメッセージに込められた意味とは、何なのでしょうか?
そして、オリアクスとルーチェは、深い闇の奥底からユンを救い出すことができるでしょうか?
・各地に、オリアクス/ルーチェ/ユンの幻影が現れます。彼らの声に耳を傾けてみましょう。
■Scene.08. 神獣
+
| | ※ストーリー
|
【 暗主の使命 】
(暗く、深い…闇の底。独り、泣く、冷たい…世界…)
混沌の片隅で、ユンは小さく呟いた。
四方八方から感じる、強い視線――彼には、その正体がわかっているようだった。
ユンの顔が、苦しげに歪む。
(この石コロに、自分を封じ込められたらいいのに…!)
右手に握り締めた小さな石を、彼は忌々しげに見つめた。
――結局、自分の力は人を傷つけることしかできないのか?~
ユンは頭を抱え、うずくまる。
(イヤだ…イヤだッ…!
オレが…神獣に…?
なるしか…ない、のか…)
その疑問に答えるものは、ない――。
虚空へと消えたユンを追い、Present Age を後にしたオリアクスとルーチェは、ようやくChaosAge へとたどり着いた。
ユンのことを想う、多数の冒険者たちもまた、2人に続き混沌の地へと足を踏み下ろす。
果てなく暗く、冷たい空間――
ルーチェは両肩を抱き、かすかに身震いする。
「ここが Chaos Age…。暗く、寂しいところですね…。
光と闇が混ざり合った、激しい力の奔流を感じます」
それでも彼女は、“ユンを探しにきたのだ”と自身を奮い立たせ、表情を引き締めた。
「 …迷える子羊は、無事でしょうか?」
「準備はいいかー! お前たち、よく付いてきてくれたな。
ユンを連れ戻すため、力を尽くすぞ!」
集まった冒険者たちを鼓舞すると、オリアクスも首をめぐらせ――ユンの姿を探し求めた。
……そして、前方に立ちすくんでいる、彼を見つける。
「――ユン! 無事だったか!」
オリアクスの声に、ルーチェの表情が明るさを取り戻した。
呼びかけられ、ユンはゆっくりと顔を上げる。
うつろな瞳が、2人の姿を捉えた。
「オリアクス…兄ちゃん…?
ルーチェ…姉ちゃん…?
それに、みんなも…
…どうして?
…ここは兄ちゃんたちの来るところじゃないよ…」
彼は目をそらすと、弱々しくつぶやく。
「…もう、諦めた。
…オレは逃げられない。
あの【神獣】を、受け入れるしかないんだ…」
後半は、ほとんど何を言っているのか聞き取れないほどに小さな声だった。
オリアクスはユンに近付くと、その両肩を大きな手の平でしっかりと包み込む。
「何をグズグズ言っている!
俺たちは、お前を Present Age へ連れ戻すために来た。
いいから…、来い。
…詳しい話は、向こうでいくらでも聞いてやる!」
「また【器】が暴れているのかと思ったが、 妙な客が来たものよ…!
わざわざ【サザン ゲートキーパー】の、餌食となりに来たのか? 」
頭へと直接響いてくる不快な声に、オリアクスが、ルーチェが、ユンが、ハッと顔をあげた。
姿は見えずとも、その強大な闇の気配はイーゴの物に他ならない。
あまりにも強い闇の力にあてられ、ルーチェの顔が青ざめる。
「サザン…ゲートキーパー…?
…【器】だと?」
オリアクスは首を捻る。
神獣について、彼はほとんど耳にしたことがなかった。
イーゴにとって必要なものであり、マブ教にとっても必要不可欠なものであるという程度の認識でしかない。
(ユンと、何の関係がある?)
オリアクスにはわからない。
「――【器】よ、喜べ!
【神獣】となった貴様が、最初に血祭にあげる贄が、目の前に―」
「…やめろッ! オレのことを勝手に喋るなッ!!」
ユンの絶叫が背筋を這い上がるような、不快な声を断ち切った。
彼は目を瞑ると、地面に向かって吐き捨てる。
「…兄ちゃんだって、わかってるだろ…?
オレは…オレは、人間じゃない…っ!
…Chaos Age で生まれた、【神獣】を宿すための【器】なんだ!
【神獣】――【サザン ゲートキーパー】と1つになったら、オレは人をキズつけるだけの生物になる…」
“血にまみれるためだけに、生き続けるんだ!”
…ユンの叫びが、闇に吸い込まれてゆく。
オリアクスとルーチェが彼を呆然と見つめる中、イーゴのクツクツとした笑い声が聞えてきた。
「…そう。こやつの命に価値などない!
必要なのは、【器】としての肉体のみ!
運命に抗うのは自由…。
だが放っておいても、あと数日の命よ…
Chaos Age で生き絶えれば、【肉体】は無に帰し、【魂】は永久に混沌の世界に囚われるだろう!」
ユンの背中が、彼の言葉を肯定するかのように、小さく震えた。
「…だが、サザン ゲートキーパーと一つになれば、話は別だ。
【魂】は解放され、【肉体】は神獣として生き長らえることが出来る…!
――そいつは、闇に囚われることを恐れ、【神獣】と一体になることを決めたのだ!」
神獣とならず、この地で命を失えば、ユンの魂はこの混沌に囚われ解放されることはない。
しかし、身体さえ受け渡せば、その魂は解放されるのだ。
だから神獣になれと、イーゴは言っている。
オリアクスはユンをひたと見据えた。
なかば、憤っているかのように表情を固くして。
「…ユン。
…お前、本当にそれでいいのか?
【サザン ゲートキーパー】に、身体を乗っ取られちまっても、いいのか!
――お前は、血を嫌い、闇に震えた。
なぜ、受け入れる必要があるッ!」
ユンはぎくりと身体をこわばらせ、オリアクスの視線を受け止める。
「――オレだってッ!
…オレだって、イヤだよ!
神獣になんか、なりたくない!
楽しい時間を、一緒に過ごしたみんな…それを、オレの体で…この腕で…痛めつけるなんて…、イヤだ、イヤだよ…」
ユンは、その場にぺたりと腰を落とした。
そして、頭を両腕で抱え込むとイヤイヤするように、首を横に振る。
「でも、もうここからは逃げ出せない…。
…兄ちゃんにはわかるでしょ?
忍び寄る、闇の気配…
【サザン ゲートキーパー】はそこまで来てる。
…オレはもう、ヤツを受け入れるしか無いんだ…!」
オリアクスも、それはこの場に足を踏み入れた瞬間から感じていた。
焼け付くような、強い視線――。
これは神獣の物だったのだと、彼はようやく理解した。
しばしの静寂の後、オリアクスはフッと笑みをこぼした。
その目は、うずくまるユンを見つめている。
「――よし、わかった」
その声から妙な響きを感じ取ったルーチェは、不安そうにオリアクスを見つめた。
「ユン。
これ以降「オレ」と言うのはやめろ。
俺の知る坊主は、いつも「僕」と言っていた。
…戻せ。
そして、命が尽きる瞬間まで“人”として…“ユン”として、生きろ!」
「…え?」
ユンが、ゆっくりと顔をあげた。
オリアクスは彼と目を合わせず、大声で叫ぶ。
「――イーゴ様。
サザン ゲートキーパーの【器】には、ユンの代わりに俺を使ってください。
…たとえ、坊主があと数日の命だとしても、構わん…!」
「…兄ちゃん!
なに言ってるの…?
やめて…、やめてよッ!」
驚いてオリアクスに走り寄ったユンは、小さなこぶしで彼を殴打した。
「兄ちゃんは関係ない!」
オリアクスは、ユンのことを気にもかけず、大声を張り上げつづける。
「…神獣の覚醒が、マブ教にとって――イーゴ様にとって大切なことは承知しています。
なればこそ…その重責を、こんな坊主じゃなく俺に任せてください」
ルーチェは、オリアクスをじっと見つめた。
……止めることはできない。
彼の瞳は、真剣そのものだった。
「…うぬぼれるな! 貴様ごときの力で、務まるとでも思っているのか!」
神獣はカオス生物の体を得てこそ、本来の力を発揮できる。
人間の体など、オモチャのように脆く、神獣は存分に力を振るえない。
イーゴはそう言い捨てた。
そして、ユンを庇おうとしているらしい彼を鼻で笑う。
「第一、子どもの姿をしていようとも、そいつはカオスの生命体。
本気を出せば、ビスクの街など、一撃で跡形もなく滅ぼすことができる。
そんな化け物を助け、何になるというのだ?
そいつの生きる場所など、どこにも在りはせんわ!」
オリアクスを必死で止めようとしていたユンの手が、鋭い言葉を向けられて凍りついた。
しかし、覚悟を決めたオリアクスにとって、その忠告は何の意味もなさなかった。
「俺は、どんな試練でも受ける覚悟がある!
ユンが“人”として死ねるのなら…、俺の魂など惜しくは無いッ!」
食い下がる彼の様子がおかしくて、イーゴはついに不気味な笑い声を響かせた。
「…クックックッ!
…面白い。
面白いぞ、オリアクス!
貴様は、マブ神祭をあそこまで成功させた男。
そこまで言うのであれば、その力、見せてもらおう!」
イーゴはオリアクスに“神獣となって後、この Chaos Age で人間たちを血祭りにあげ続けることが出来るか”と問うた。
そうすることで、不完全な神獣は、力を取り戻してゆくことができる。
そしてそれと同時に、オリアクスの肉体と精神は混沌へと引きずり込まれてゆく――。
オリアクスは、即座に頷いた。
覚悟は当の昔――ユンを追うことに決めたときから出来ていた。
「オリアクス、本気で言っているのですか!
あなた様の魂は…この暗闇に呑まれてしまうのですよ!?」
ムダだとわかっていながらも、ルーチェは問いかけずにはいられなかった。
オリアクスは一言だけ、「――構わん」と答えると、冒険者たちに向き直る。
「…お前たち。
俺は本望だ。
イーゴ様に拾われ、闇の力に染まり、ギルドを率いてきた…。
たくさんの、愛すべき信徒にも恵まれた。
…悪くない時を、過ごしたと思う。
闇の力は不滅だ。
…マブ教徒ども、ダイアロスを紅に塗り替えろ!
…マブ神祭で深めた血の結束を、ムダにするんじゃない!」
オリアクスを追ってきたマブ教徒たちは、口を閉ざし、その言葉を心に刻み付ける。
ついで、オリアクスはルーチェに顔を向けた。
「お前とは色々とぶつかりもしたが…今となっては良い思い出だ」
(俺たちの元で暮らしていた坊主を追って時代を超えるなど、どうかしている。)
全く予測していなかった出来事なだけに、カオスゲートでルーチェと会った時、思わず笑ってしまったほどだ。
ルーチェは、「迷える子羊を救うことは、私たちの使命です」と前置きした上で、真っ向
から彼を見つめた。
「ですが、それだけではありません。
今回のあなた様の行動に、深く感銘を受けました…。
…力になれず、口惜しく思います」
そして、別れの挨拶の代わりに、こう告げた。
「…今後もマブ教とは、徹底的に戦わせて頂きます。
…良いですか? あなた様と!
でございます!」
彼女らしい言葉に、オリアクスはかすかに口角を上げる。
そして「望むところだ」と、口中で応えを返した。
「兄ちゃん、イヤだ…、…僕、僕…っ…!
…僕、何のお礼もしてない!
…助けてもらうばっかりで…」
ユンが、小さく嗚咽の声をもらした。
腰にしがみついている彼の頭を、オリアクスは軽く撫でる。
「――いいか、「ユン」。
俺が与えた名を、決して忘れるな。
最後まで、胸を張って生きろ。
…命が尽きるその瞬間までな」
過去に失った物、これから失うであろう物、心の奥底に眠っていた、人を思いやる心…。
ユンと触れ合う中で見出したそれらのことを思い、オリアクスは満足げな笑みを浮かべた。
彼は、ユンの頭からそっと手を離すと、ルーチェの方へと突き飛ばす。
彼女は、優しくユンを抱きとめた。
「――イヤ!イヤだッ!行かないで!」
「――そこにいるのだろう【サザン ゲートキーパー】!」
オリアクスは両手を広げ、呼びかけた。
神獣の視線を痛いほど感じながら、彼は目を閉じる。
「さぁ…、来い!!
血塗られた御手に、栄えあれ――!」
「クックックッ…! 6体の神獣がこの時空に集う時、すべての力は我が物となる…!」
イーゴの邪悪な声が響き渡るなか――地面が、鳴動した。
冒険者たちは戸惑い、ルーチェは暴れるユンを力いっぱい抱きしめる。
生暖かい風が吹き荒れるなか、ついに、それは姿を現した。
オリアクスの、悲鳴も絶叫も無い。
静かに…だが、確かにそれは覚醒した。
しかも、1人ではなく、2人、3人、4人――次々と増殖してゆく。
「人間とはいえ、暗使の頂点に君臨する男だけはある。
不完全ながらも、分身は作り出せるようだな!
さぁ【サザン ゲートキーパー】よ!
血を浴び、本来の力を取り戻せ!
全てを混沌に沈めるのだ…!」
ユンと冒険者を守らなくては――!
ルーチェが面差しを険しくした矢先、「…ぐ……ッ!」サザン ゲートキーパーの口から、苦しげな声が漏れた。
「お、お前たち……、歯ぁ…くいしばれッ!
…ここにいたら、…俺に…殺されるぞッ…!」
それは、まぎれもなくオリアクスの言葉だった。
「次に、会うときは…容赦せん…!
…だが、今は生き延びろ…!
ユンと共に、帰れ……ッ!」
その言葉と共に、視界が光に包まれた。
驚きのあまり緩んだルーチェの腕を払いのけて、ユンは「――今だッ!」小さな石を頭上にかざす。
「オリアクスッ!」
ルーチェは無我夢中で彼の名を叫んだ。
「…さらばだ」
オリアクスの声が耳に響く。
「――シシッ!」
純白の光が全てを包み込んだ。
【 雪原の浮遊都市 】
――冷たい風が、頬を撫でた。
ルーチェは、うっすらと目を開ける。一面に広がる、銀世界――。
彼女はゆっくりと体を起こす。
どこも痛むところは無さそうだ。
周囲を見渡すと、冒険者達が立ち上がろうとしているのが目に入った。
――夢?
一瞬そんな甘い考えが頭をよぎったが、あの Chaos Age での出来事は確かに現実で起こったことだ。
(…ここは…イプス雪原…? …Future Age へと戻ってきたのですね…)
オリアクスが、最後の力を振り絞り逃がしてくれたのに違いなかった。
何と言う精神力だろう。
…そしてこれが、彼に残された最後の良心だったのかと思うと、胸が潰れそうに痛んだ。
【サザン ゲートキーパー】となったオリアクスは、じきに人の心を失ってしまうに違いない。
もはや彼は…「人」としての存在ではなく、【悪しき神獣の1人】として、混沌の地で新たな生を受けたのだから――。
(Chaos Age のイーゴは、強大な邪念に包まれていました…)
Present Age とは比較にならないほどの、濃い闇の気配……。
思い出し、ルーチェは小さく身震いする。
Future Age でカオス・ゲートを開き、邪悪な力を一身に集めたのだろう。
(全ての神獣が彼の元に集う時、あの者は、どれほどの力を掌握するのでしょうか…?)
ルーチェは考えまいとして、頭を振った。
そして、重大なことに気付く。
――ユンの姿が、無い。
「ユン? ユンッ! どこにいるのですかッ?」
広大な雪原に問い掛けるものの、返事は無い。
( まさか――?
そんな、あと数日と言っていたはずなのに…!)
『ルーチェ姉ちゃん、みんな…、僕なら大丈夫だよ。心配しないで…』
穏やかなユンの声が、遠くから聞えてきた。
彼が無事なことを知り、ルーチェは胸を撫で下ろす。
『ねぇ…とっても大事なお話をするから、聞いてくれないかな?
…僕ね、ここへ飛ばされる寸前に、【オリアクス兄ちゃんの意識】を封
じたの。
Chaos Age にだけ存在する、記憶と意識を封じられる石――この【時の石】に、ね』
ユンの声は、希望に溢れている。
『この意識を移す【身体】さえあれば、兄ちゃんを復活させられるかもしれない…。
その可能性は、この Future Age に眠っているんだ。
…この雪原のはるか上空に浮かぶ、【浮遊都市 バハ】にね!』
バハでは失われた古代文明が暴かれ、人工生命体を作り出しているらしいこと…
そしてそれは、ホムンクルスと呼ばれていること…。
ユンは、Chaos Age のイーゴが話していたことを、ゆっくりと語ってゆく。
『…ルーチェ姉ちゃん、この【時の石】を受け取って…!
僕は、兄ちゃんの意識を封じるために、カオス生物としての力をほとんど使っちゃったんだ。
…だから、僕じゃ復活させられない…。
でも、兄ちゃんのことを大切に想う、勇気ある人ならきっと、何とかしてくれると思うんだ!」
ルーチェの目の前に、小さな石が現れた。
彼女は、両手でそれを包み込む。
(このような小さな石に、オリアクスの意識が……?)
「ユン、たしかに受け取りました」
ルーチェは、しっかりとその石を握り締める。
『僕ね…自分の力は、人をキズ付けるコトにしか使えないと思ってた…。
だから、最後の最後で、大切な人のために使えて嬉しい!』
ユンは、照れくさそうに“エヘヘ”と笑った。
『…僕、もう行かなくちゃ…。
オリアクス兄ちゃんがくれた、大切な大切な宝物だもん…。
一分だって、ムダにするもんか!』
(動けなくなるまで色んな物を見て…色んな物に触れて…、たくさんのことを感じるんだ!)
ユンは、固く決意する。
『…みんなの顔をみたら、泣いちゃいそう…。…だから僕、…このまま行くね』
遠ざかってゆく彼の気配を感じ、ルーチェの顔は切なげに歪んだ。
『人間の心、あったかい心。
…幸せな気持ち。
みんなと会って初めて知ったんだ。
本当にありがとう…。
僕を、「人」にしてくれて、ありがとう』
声が、遠く消えてゆく――。
ルーチェは、そっと目を閉じた。
「――ユン。あなたは、強い子ですね…。
残された時間を、精一杯…生きるのですよ」
――と。
ルーチェが握り締めていた時の石が、かすかに熱を発していた。
(オリアクスが……呼んでいる?)
彼女は柔らかく微笑むと、冒険者たちへ顔を向けた。
「皆さま、…残念ですが、ここでお別れです。
私は、ユンが残した言葉を信じ、【バハ】へ向かいます。
邪神を信奉する愚か者ではありますが、
ユンの身代わりとして命を捧げた彼を、
このまま見捨てることはできません」
静かに雪が降り積もる、FutureAge。
この、生命が絶えた時代に、一体どんな希望が残されているというのか?
もし本当に、奇跡が残されているとしたら、それは……?
彼女は、空の高みへと思いを馳せる。
「この白銀の世界に眠る奇跡を、きっと呼び覚まして見せます…!」
(――ラル・ファク神よ…この勇気ある者たちに、祝福を!!)
ルーチェの祈りが、冒険者たちに光となって降り注いだ。
――希望と悪夢を乗せた【浮遊都市 バハ】が姿を現すのは、もう少し先のできごとである。
|
●このとき進行していたイベント内容
■ 神獣 ■
Chaos Age - 火の門 - で再会を果たす、ユンとオリアクス、そしてルーチェ。
運命の歯車は、どのような軌跡を描くのか――?
※ 【ご注意】をお読みのうえ、Chaos Age にてイベントにご参加ください。
オリアクスの帰還〜囚われの聖女〜 †
- 050615〜050617
- 第1期ストーリーイベント 第二話
- ハドソン『Master of Epic』運営チーム 実施
- CAST
●あらすじ
静かに雪が降り積もる、Future Age。
「私は、ユンが残した言葉を信じ、【バハ】へ向かいます。
邪神を信奉する愚か者ではありますが、ユンの身代わりとして命を捧げた彼を、
このまま見捨てることはできません」
そう言い残し、ルーチェは【浮遊都市 バハ】へと旅立った。
【時の石】に封じられたオリアクスの魂は?
単身バハへ乗り込んだルーチェの運命は?
『Master of Epic』ストーリーイベント「少年ユンの物語」に続く第二話、
「オリアクスの帰還〜囚われの聖女〜」、2005.06.15(Wed)いよいよ開始!
物理的な力ではない、魔法でもない。
今、本当に必要なのは、それぞれの“想い”――。
“想いの結晶”こそが、運命を切り開く最後の術(すべ)となる――。
※ 前回までの詳しいあらすじは、「イベント情報」>「少年ユンの物語」をご覧ください。
■Scene.01 「魔を穿つ聖槍」
+
| | ※ストーリー
|
【 プロローグ 】
――静寂(しじま)。
その静寂を、無造作に上塗りするように、ひとすじのノイズ。
耳鳴り…? 音…? 声…?
唸りとも、悲鳴ともつかないそれは、静かに、しかし重く、生きるものの耳を乱した。
ひとすじ、またひとすじ…。
「うぅ…」
「あぁ…ぅぅ…」
…人? …人の声?
そう、それは確かに“生きもの”の発する“声”であった。
その“声”の主は、重い足取りでふらふらと、何処か行くあてがあるでもなく、ただただ辺りをふらふらと彷徨っていた。
黒く重い影を背負い、その“声”の主はただただ彷徨い続けていた。
【 囚われの聖女 】
■イーゴ: さあ、もう逃げ場はない…その、「時の石」を渡してもらおうか。
それさえあれば、バハと一体になったこの肉体から、ようやく解放される…。
■ルーチェ: 絶対に渡す訳には参りません!
ユンの、そして多くの人々の願いを、無駄にする訳にはいかないのです!
■イーゴ: 時の彼方で何があったのか知らぬが、今の私には関係のないことだ。
お前がカオスの時代で出会ったのは、カオスに渡った「未来」の私…。
今の私ではない…。
・
■イーゴ: ううっ……今この時も、私の精神が崩れて行くのを感じる…。
もう、時間が無いのだよ…。
■ルーチェ: あなたはすでに、狂っています!
地上のすべてを滅ぼしてもなお、飽き足らないというのですか…。
そのおぞましい姿は、あなたの醜い野心そのものです!
■イーゴ: 何とでも言うが良い。
すべては、カオスゲートを開くため…。
それがかなった今、私はカオスエイジへと渡らねばならんのだ。
新たな肉体を手に入れてな…。
・
■イーゴ: さあ、石を渡すのだ。
あのホムンクルスは逃がしたが、お前を逃がす訳にはいかん・・・。
■ルーチェ: なりません!
■イーゴ: あまり手間をとらせるな!
小ざかしい、小娘が!
・
悲鳴が夜を切り裂いた。
聞くものもない、おぞましき世界の果てで、ただ一度きりの悲鳴が、黒き闇を切り裂いた。
…そして、静寂。
何事もなかったかのように、辺りは静寂を取り戻していた。
黒き闇に、深い赤がねっとりと染み込んでいることを除いては…。
【 神託 】
■ミスト: 親愛なる信徒の皆様…私の声が聞こえますか?
私はラル・ファク教の大神官、ミストです。
たった今、私の心にラル・ファク神のご神託が下されました。
我がラル・ファク教の敬虔な信徒であるルーチェが、悪しき者の手により、とらわれの身となっているようです。
遠い未来の地、「浮遊都市バハ」と呼ばれる場所で…。
・
世界でただ一人、大神官ミストだけがルーチェの危機を察知していた。
…ルーチェ…。
そう呟くと彼女は、堅く封に閉ざされた一冊の古文書を手に取った。
――ラル・ファク教に受け継がれし古代の秘術。その秘術を蘇らせること以外、悪しき魔の手を払拭することはできない。
ミストは静かに目を伏せた。
時間にして、ほんの6〜8秒であろうか。
真っ白い帽子の鍔が揺れた。
その刹那、両の瞼はすっと開かれた。
・
■ミスト: ご神託によれば、強大な闇の力が影響を及ぼしているようです…。
この闇を打ち破るには、我々ラル・ファク教の高位神官にのみ受け継がれし、秘術の力を使うしか無いのかもしれません。
秘術の記されし古文書にかけられた封印は、高位神官にのみ解くことができるとされております。
封印を解き、古文書を読み解くまでの間、今しばらくのお時間をいただけるでしょうか。
ラル・ファク神よ…貴方の子をお守り下さい…。
【 魔を穿つ聖槍 】
■ミスト: 先ほど、フューチャーエイジに向かった我らの信徒からの報告が入りました。
ルーチェは「浮遊都市バハ」にて、巨大な触手に囚われているようです。
彼女は自らの周囲に結界を作り出し、何とか身を守っているようですが…。
そう長くは持たないでしょう。
・
ミストは自問していた――。
“彼らに託して良いものか…?”
下手をすると世界を破滅させてしまいかねない古の秘術。
その秘術を発動させるのは自分自身だとしても、その法具の作成を冒険者達の手に委ねるということは、即ちラル・ファクの信徒を始めとする冒険者達をも危険にさらすことになりはしまいか?
そもそも、そんな危険を冒してまで彼らは手を貸してくれるのだろうか?
ミストは改めて思い起こす。
――ユンを救い出そうと、必死で魔に抗い続け、討ち果たした冒険者達の後姿。
――ルーチェがこの地を去ると告げ旅立った時の、冒険者達の悲しげな瞳。
それらは、ミストにそれを決意させるに十分足りえる理由であった。
・
■ミスト: そして、先ほどお話した、彼女を救うための「秘術」が、ようやく明らかになりました。
古の時代に封じられた秘術…。
【 セイクリッド・ブラスト 】を行使するしか、彼女を救い出す手段は無いようです。
どんな邪悪な存在をも、一瞬で無に帰す力を秘めた、聖なる槍。
それが、セイクリッド・ブラストです。
その想像を絶する威力ゆえに、封印された神の兵器…。
一説によれば、はるか昔に栄えていた古代モラ族の文明は、この兵器によって滅びたとも言われています。
ここで、信徒の皆様…。
いえ、力を貸しても良いと思ってくださるすべての方に、お願いがあります。
聖なる槍を射るためには、その発射装置となる法具【 セイクリッド・キャノン 】が二台必要になります。
それを、共に作っていただきたいのです。
今この時も、ルーチェを守る結界は、徐々に弱まっています。
セイクリッド・キャノンを作る手助けを、皆様にお願いしたいのです!
・
すでに迷いはなかった。
すべてをラル・ファクの信徒を始めとする冒険者達の手に委ねよう。
この者達ならば、きっとルーチェを救い出すことができる。
…残された時間は少ない。
|
●このとき進行していたイベント内容
■06.15 18:20〜
現在、ダイアロス各地でオリアクスの姿が目撃されています。
一体彼の身に何が起きたのか。そして今、何を思い、どこへ行くのか。
もし彼に出会ったら、ぜひ話を聞いてみてください。
■06.15 20:40〜
ラル・ファク教の大神官 ミストより、「ルーチェをとらえている闇の力を打ち破るため、
封印された神の兵器の作成に協力してほしい」と依頼がありました。
それを設置する土台には、魔力を効率的に蓄えるための【 マナ・ロック 】が必要となります。
浮遊都市バハにあるという【 マナ・ロック 】を探しだし、採掘のスキルを使い、
それが土台となるようならしてください。
■06.15 21:00〜
聖なる槍の発射装置となる「セイクリッド・キャノン」を完成させるには、2つの素材が必要となります。
◆【パーツ1】セイクリッド・ピース 〜キャノンを形作る、外殻パーツ〜 ◆
◆【パーツ2】ノア・フュエル 〜マナ・エネルギーを吸収・増幅する、聖なる水〜 ◆
・出来上がったパーツ2種類を1セットにして、バハに設置されている【パーツ納品 BOX】へトレードしてください。
・納品されたパーツが一定数を越えるごとに、セイクリッド・キャノンが完成に近付いてゆきます。
※ 他のサーバーよりも早く完成させると、今後の展開に好影響を及ぼす可能性があります。
■06.16 01:00〜
皆様のご協力により、莫大な材料を必要とした【 セイクリッド・キャノン 】は、無事に2基を完成させることができました。
現在は【 セイクリッド・キャノン 】の最終調整に入っております。
名前 | 重さ | 買値 (売値) | 入手先 | 場所 | 用途 | 転 送 | 備考 |
---|
セイクリッド・ピース | ⇒詳細 |
---|
ノア・フュエル | ⇒詳細 |
---|
■Scene.02 「結晶」
+
| | ※ストーリー
|
【 想いの結晶 】
冒険者達は昼夜を問わず走り続けた。
鍛冶師、木工師、仕立て屋、細工師、筆記師、バーテンダー、料理師、調合師等の、生産者達。
力なき者は素材を収集し、武人はそれを助けた。
…しかし――。
失われた秘術を完成させるには、気の遠くなるような過程を必要としていた。
既に彼らの顔には疲労の色が浮かび、志半ばに倒れる者もあった。
“本当に完成させることができるのだろうか?”
そう問いかけながらも、彼らは走ることをやめなかった。
そう、一つの願いを…。
たった一つの願いを成就させるために。
“ルーチェを救え!”
物理的な力ではない。
魔法でもない。
支えているのは紛れもなく、
冒険者達すべての“想い”がひとつになった、“想いの結晶”に他ならなかった。
そして、遂にそれは完成した――。
・
■ミスト: 皆様、法具【 セイクリッド・キャノン 】を、よくぞ完成させてくれました。
皆様が法具を完成させるまでの時間は、私の予想をはるかに上回るものでした。
結束することの素晴らしさを、これほど実感したことはございません。
法具も、その持てる真の力を最大限に発揮してくれることでしょう。
皆様が互いの力を合わせた結果が、目の前にある法具なのです。
この完成度であれば、十分に力を発揮することができるでしょう。
皆様の努力に、深く感謝いたします。
決してあきらめることなく、最後まで尽力されていた姿は、とても美しいものでした。
さて・・・セイクリッド・キャノンは完成にこぎつけましたが、これですべての準備が整った訳ではございません。
【 セイクリッド・ブラスト 】を行使するためには、セイクリッド・キャノン自身が大気中からマナを吸収し、蓄える必要があるのです。
ルーチェを守っている結界は、だいぶ力を失ってきているようです。
ですが、マナを蓄える時間程度であれば、持ちこたえてくれると…
【 悪魔の襲来 】
ミストの言葉を遮るように、黒き闇の声が、低く、重く、響き渡った。
それは、地の底から這い上がってきた黒い蟲が鼓膜の中で蠢くかのように、ミストの、そして冒険者達の耳に絡みついた。
・
■イーゴ: ぐっ…ううぅ…この騒々しい思念…この小娘を、救い出そうという魂胆か…。
■ミスト: このおぞましい声は…イーゴ!
■イーゴ: それは…セイクリッド・キャノンではないか…。
この女を捕らえた後、しばらく意識が遠のいていたが…。
そんな物まで作り出していたか…。
クックック…面白い。たまには本気で遊んでやるとしようか。
貴様らに、耐え抜くことができるかな?
──開け…混沌の門よ。
来たれ…闇に潜む魔獣どもよ。
さぁ、その爪で、その牙で、虫ケラどもを切り裂き、喰らうが良い…!
■ミスト: これは…。
皆様、イーゴはカオスゲートを開き、カオスエイジの魔物たちを呼び寄せているようです。
このままでは、【 セイクリッド・キャノン 】が破壊され、ルーチェを救うことも叶わなくなるでしょう。
どうか、皆様のお力をお貸しください!
カオスゲートから現れた魔物たちの群れは、バハへのゲートを目指しているようです。
キャノンへ近づけてはなりません!
なんとしてもイプス雪原でくい止めてください!
・
イーゴの号令により、闇の魔物がそのおぞましい姿を現した。
法具を完成させてしまった冒険者達を葬るために――。
そして、完成してしまった法具を滅するために――。
・
■ミスト: どうやら、退ける事が出来たようですが…。
邪悪な魔力が弱まる気配は一向に感じられません。
あの魔物たち……まだ現れる可能性があります…皆様、気を抜かないでください!
■イーゴ: ほぅ…押し返したか。
なかなかやるようだが、これで終わりだとは思っていないだろう。
さて…次は、耐えられるかな?
──開け…混沌の門よ。
来たれ…闇に潜む魔獣どもよ。
・
次々と襲い来る、魔物の群れ――。
冒険者達の顔に疲労の色が浮かび始める。
今にもちぎれそうな手足を引きずりながら、尚立ち上がり、立ち向かう冒険者達。
・
■ミスト: 皆様、恐れてはなりません。
私達がここで敗れるようなことがあれば、ルーチェを救うことなど不可能となってしまいます。
魔物たちを倒し、キャノンを守るのです!
■イーゴ: 面白いぞ、虫ケラ達よ。
貴様らがどこまでやれるか、じっくりと見物させてもらおう。
──開け…混沌の門よ。来たれ…闇に潜む魔獣どもよ。
■ミスト: おぉ…イーゴ。まだ魔物を放とうと言うのですね…。
親愛なる信徒たちよ。お聞きください。
秘術【セイクリッド・ブラスト】を唱えるには、強い精神力を必要とします。
私は、これよりラル・ファク神のご加護を受け、力を高めなければなりません。
【セイクリッド・キャノン】を…ルーチェをお守りください。
ラル・ファク神よ…我らにそのご威光を…!
・
古の秘術を発動させるには、ラル・ファク神の加護を受ける必要があった。
それは大神官であるミストといえど例外ではない。
ミストは魔物の撃退を冒険者達に託すと、一人踵を返した。
――ルーチェを…
――逞しく優しき冒険者達を…
…お守りください。
【 彷徨 】
その男は、未だ彷徨い続けていた。
遥かなる地で起きている惨事を、知る由もなく――。
「うぅ…」
「あぁ…ぅぅ…」
「う…イーゴ……」
「……バハ…うぅ…ぅぅ…」
時折狂ったように押し寄せる記憶の断片に、彼は抗う術すら持ちあわせていなかった。
すべての苦痛を受け入れ、黒く重い影を背負い、ただただ彷徨い続けるしかなかった。
|
●このとき進行していたイベント内容
■06.16 20:10〜
現在、【 セイクリッド・キャノン 】は調整を完了し、聖なる槍【 セイクリッド・ブラスト 】
の発動に必要なマナを充填しています。
しかし、それを知ったイーゴは【 セイクリッド・キャノン 】を破壊すべく、カオスゲートを開いてしまいました。
【 イプス雪原 】のカオスゲートから【 浮遊都市バハ 】に向け、モンスターが押し寄せています。
【 セイクリッド・キャノン 】が破壊されぬよう、守りきってください。
◆サーバー対抗【 セイクリッド・キャノン 】完成時間の結果が発表されました。
結果は以下の通りです。
順位 サーバー名 完成時間
1位 DIAMOND 06/15 23:39
2位 EMERALD 06/15 23:51
3位 PEARL 06/15 23:54
■Scene.03 「オリアクスの帰還」
+
| | ※ストーリー
|
【 撃退 】
傷ついた身体を引きずりながらも、果敢に魔物に切りかかる者――。
自身を危険にさらしながらも、必死で同胞の回復に専念する者――。
ありったけの精神を集中し、倒れた者の魂に生気を吹き込む者――。
冒険者達はあらん限りの力を振り絞った。
そして、遂には魔物たちの撃退に成功した。
■イーゴ: ぐ…うぅ…どうやら…力を使いすぎたようだな。
楽しみは後に取っておく事にしよう…クックック…
■ミスト: どうやら、悪しき気は退いたようです…皆様、よく持ちこたえてくれました。
私も既に精神統一を済ませましたので、キャノンにマナが溜まりさえすれば、
【 セイクリッド・ブラスト 】をいつでも行使することが可能となるでしょう。
しかし、イーゴの事…おとなしく行使させてくれるとは思えません。
皆様、どうかキャノンにマナが蓄えられるまでの時間に、英気を養ってください。
しばしの静寂が訪れた。
冒険者達はそれぞれの地で、短い休息に入った――。
【 聖槍 】
――時は満ちた。
秘術を行使するためのマナが満ちたのだ。
ミストは愛用の白いローブと帽子を身にまとうと、大聖堂を後にした。
“目指すはバハ!”
■ミスト: 親愛なる信徒の皆様…私の声が聞こえますか?
私はラル・ファク教の大神官、ミストです。
どうやら、秘術【 セイクリッド・ブラスト 】を行使するためのマナが、キャノンを満たしたようです。
セイクリッド・ブラストは、ラル・ファク教の大神官である、この私にしか行使することができません。
今より、私の魔力を引きがねとし、キャノンを起動いたします。
■イーゴ: クックック…我が力に、これほどまでに抗うとは、お前たちを見くびっていたようだ。
おまけに、ラル・ファクの大神官までが、ここまでやって来るとは…。
ならば、遊びの最後に、とっておきの「ゲスト」たちで、相手をしてやろう。
──開け…混沌の門よ。
来たれ…夜を喰らう者よ…闇を這う魔獣よ!
カオスより召喚せし、闇の魔獣…。
いままでのお遊びと一緒にせぬことだな…クックック…
ふたたびその姿を現したイーゴは、魔物を放った。
更に力を増した、闇の魔物を――。
■ミスト: これは…なんと恐ろしい魔力…!
イーゴは、ケタ違いの力を秘めた魔物を、カオスゲートより呼び出したようです。
新たに現れた魔物たちの魔力が強すぎて、このままではセイクリッド・ブラストを行使することができません。
一人でも多く雪原に向かい、侵攻してくる魔物たちを、一刻も早く、せん滅するのです!
冒険者達は立ち上がった。
剣を抜き、槍を掲げ、拳を握り、呪文を唱えた。
…これが、最後の戦いだ。
冒険者達は持てる力の限りを尽くし、魔物達に立ち向かった。
次々と滅してゆく魔物達。
そして、この地からすべての魔物が一掃されたその時…。
■ミスト: 今です…!
──ラル・ファク神よ…その偉大なるお力を聖なる槍とし、神敵を浄化せんことを…。
セイクリッド・ブラスト…!!
魔を穿つ聖槍が火を吹いた。
槍は一直線の軌跡を描き、ルーチェを捕らえるそのおぞましき触手に突き刺さった。
■イーゴ: うぐっ! …こしゃくな虫ケラどもめ!
だが、その程度では、我が束縛を破壊することなどできはせぬぞ。
その悪あがき、どこまで続くかな…クックック…。
開け…混沌の門よ。
来たれ…夜を喰らう者よ…闇を這う魔獣よ!
より強力な魔物達が、冒険者達に襲いかかる。
…だが――。
――倒れるわけにはいかない。
“ルーチェを救え!”
それだけを、ただそれだけを信念に、冒険者達は剣を振るい、呪文を唱えた。
■イーゴ: クックック…古代の秘術とやらの威力は、そんなものか?
その程度では、我が束縛を破る事など到底不可能というものよ…!
■ミスト: 新たに現れた魔物たちは、強力な邪気を発しています。
このままでは、セイクリッド・ブラスト行使の妨げとなってしまいます…。
1体でも多くの魔物を倒してください!
■イーゴ: 貴様らの力など、このイーゴには届きはせぬ!
そろそろ諦めるのだな…!
■ミスト: 諦めてはなりません!
…強力な魔物が倒れると、一時的ではありますが、邪気の減少を感じます。
その機にセイクリッド・ブラストを行使します…!
■イーゴ: まだ、抵抗する気か!
「時の石」の力は我が大願成就のため無くてはならぬもの…。
虫ケラどもになど、勿体ないわ!
■ミスト: もう少しです!
もう少しでルーチェを救う事ができます…!
秘術の発動を妨げている魔物を、1体でも多く打ち倒すのです!
■イーゴ: おのれ…!
この「時の石」は…貴様らなどに渡しはせぬ…!
──開け…混沌の門よ。
来たれ…夜を喰らう者よ…闇を這う魔獣よ!
■ミスト: ──ラル・ファク神よ…その偉大なるお力を聖なる槍とし、神敵を浄化せんことを…。
セイクリッド・ブラスト…!!
イーゴは標的を法具に集中すべく、魔物達に命を下した。
魔物達の手によって、法具は少しずつ削られてゆく。
■ミスト: 皆様、大変です…!
セイクリッド・キャノンが悪しき者達の手により攻撃を受けています!
もしセイクリッド・キャノンが破壊されてしまえば、ルーチェを救うことなど出来なくなってしまうでしょう。
何としても、キャノンを守るのです!
■イーゴ: クックック…聖なる法具だと……?笑止な!
跡形もなく破壊してくれるわ!!
ボロボロの身体で冒険者達は魔物の前に立ちはだかる。
たとえ命が果てようとも、法具を破壊させるわけにはいかない!
守るべきものを背負い、冒険者達は戦い続けた。
■ミスト: これで…最後です…!
──ラル・ファク神よ…その偉大なるお力を聖なる槍とし、神敵を浄化せんことを…。
セイクリッド・ブラスト…!!
――閃光。
ルーチェを捕らえていたその巨大な触手は、古の秘術の前に崩れ落ちた。
一瞬の静寂。
そして、
湧き上がる歓声。
■イーゴ: よもや、我が束縛を破るとは…虫ケラどもよ。面白い余興だったぞ。
礼代わりに、今回は引いてやろう。
だだが、我が力、この程度とは思わぬことだ…クックック…。
■ミスト: 皆様…悪しき気配は、退いたようです。
これは…法具【 セイクリッド・キャノン 】も、その役目を終えたようですね。
どうやら、現代の素材では、完全には古の兵器を蘇らせる事はできていなかったようです。
秘術を行使するたびに、キャノンにも無理が生じていたのでしょう…。
冒険者達が歓喜する中、ミストは静かに歩を進めた。
【 オリアクスの帰還 】
■ルーチェ: うっ…んっ…
■ミスト: ルーチェ…!
気が付きましたか!?
■ルーチェ: ミ…ミスト様…!
なぜ、ミスト様がここに…?
そして、このたくさんの人々は…。
■ミスト: どうやら、囚われてからの記憶が、途絶えているようですね。
ここにいる皆様の尽力で、あなたは助け出されたのですよ…。
■ルーチェ: 私…大変なご迷惑をお掛けしてしまったようですわね。
皆様、本当にありがとうございました。
…今も「時の石」は、この手の中で、輝いております。
早く、彼を……。
ルーチェの言葉が終わりきらないうちに、一人の男が声を発した。
■オリアクス: ここは…見覚えが……ある…。
■ルーチェ: その声は…オリアクス!?
なぜ戻って来てしまったのですか!
■オリアクス: 呼ばれているような…気が…した……。
■ルーチェ: あなたが戻ったことを察知すれば、イーゴが再び襲ってくる可能性も考えられるのですよ!?
…もう、一刻の猶予もありません。
ここで、時の石に封じられた記憶を、あなたに戻します!
ルーチェはそう言うが早いか、手にした時の石を頭上に掲げた。
刹那、時が止まった。
あらゆる時間と空間が一瞬だけその形を変えた。
ルーチェには何が起きたのか理解できなかった。
いや、「理解する」という概念すら与えられない、ほんの一瞬の時の歪みであった。
ただ一つ、理解できたことは…。
■ルーチェ: 石が……砕け散ってしまいましたが…。
この光は…?
■オリアクス: ぐ…ううぅ…
■ルーチェ: …オリアクス?
■オリアクス: …………………
…ただ一つ理解できたことは、目の前にいる男が帰って来たということ。
長い長い混沌から、帰って来たということだけだった。
・
■オリアクス: …む…ここは…?
…お前は…ルー…チェ…。
■ルーチェ: あなた様?
…自分が誰だか、お分かりになりますか?
■オリアクス: 準 備 は い い か ぁー!
………痛ッ! 頭がクラクラする…。 何やら、長い夢を観ていたようだ…。
霧の世界に閉じ込められたような…、そんな不確かな世界を歩いていた…。
たった独りで…、終わりのない旅を…。
それに俺は…、あの時…、イーゴ様に我が身を…、捧げたはずだが…。
■ルーチェ: 良いのです、オリアクス。
今はまだ、考えなくとも…。
■オリアクス: どうやら、貴様に助けられたようだな。
……まったく、余計なことをする。
■ルーチェ: まあっ…なんと無礼な…。
別に、あなた様を助けたかった訳ではございません!
私は、ただ…あの少年…ユンの願いに、応じたまでのことです!
■オリアクス: ユン…。
あいつは、あいつの望む通りに、生きることができたのだろうか…。
■ルーチェ: ……少なくとも私は、あの少年が【 人 】としての尊い時を、確かに生き抜いたのだと信じています。
■オリアクス: そうか…そうだな。
俺も、そう信じるとしよう。
だが…元々、ユンは俺の舎弟だ。お前に心配してもらう必要など無い。
■ルーチェ: …やはり、あなた様とは相容れないようですわね。
■オリアクス: それはこちらの台詞だ。
偽善者どもとは、いずれケリをつけねばならん。
…覚悟しておくが良い!
■ルーチェ: あなた様こそ、その首を、充分に綺麗にしておいてくださいまし!
■ミスト: ルーチェ、およしなさい。
そこの黒い異教徒も、黙るのです。
このような危険な場所で、言い争いなどしている場合ではありません。
■オリアクス: !?
■ルーチェ: !!
■ミスト: ルーチェ。
邪教の者のためといえども、あなたの勇気ある行動は立派なものでした。
この男を復活させた結果がどう出るか、私にも分かりません。
ですが、いかなる者であれ、命あるところには、わずかなりとも希望は生まれてくるでしょう。
…さあ、私たちの時代に戻りましょう。
すべての者に、ラル・ファク神のご加護があらんことを。
ラル・ファク、イルファッシーナ。
■オリアクス: 勝手に、お前たちの神の加護を祈るんじゃない!
この俺様には…マブ神の…イーゴ様の…。
■ルーチェ: どうしました?
急に、顔色が悪くなったようですが…。
■オリアクス: …いや、何でもない。
オリアクスは触手に蝕まれたかつてのイルミナ城に目をやった。
そしてすぐに、冒険者達に向き直る。
■オリアクス: さぁて、お前達!
準備はいいかー!
そこにいるお前たち!
疲れた顔しやがって。ずいぶんと迷惑かけちまったみたいだな…。
だが、お陰で助かったぞッ!俺は、もう一度だけ【俺の人生】を生きられそうだ…。
こんな所に居ても、未来は開けんッ!
さぁ、俺たちの時代へ戻るぞッ!
■ルーチェ: …まぁ!元通りになって嬉しいのか、哀しいのか。分かりませんわ。
ともかく、決着がつくまでは、死んでもらう訳にはいきませんものね。
■オリアクス: ん? ルーチェよ、何か言ったか?
■ルーチェ: …いいえ! 何でもございません!
■オリアクス: まぁいい。
…それじゃお前達、とっとと帰るぞ!!
ミスト、ルーチェ、オリアクス…。
それぞれがそれぞれに、ある種の不安を抱いていた。
…だが。
今はひとときそれを忘れよう。
“勇気ある冒険者達に感謝を――。”
それだけが、今の3人の共通した想いであった。
・
・
・
・
・
■イーゴ: これが…時の石のかけらか…。
これがあれば、時の石を再生することができる…これさえあれば…。
|
●このとき進行していたイベント内容
■06.16 20:10〜
現在、【 セイクリッド・キャノン 】は調整を完了し、聖なる槍【 セイクリッド・ブラスト 】
の発動に必要なマナを充填しています。
しかし、それを知ったイーゴは【 セイクリッド・キャノン 】を破壊すべく、カオスゲートを開いてしまいました。
【 イプス雪原 】のカオスゲートから【 浮遊都市バハ 】に向け、モンスターが押し寄せています。
【 セイクリッド・キャノン 】が破壊されぬよう、守りきってください。
■06.17 20:10〜
各地を放浪していたオリアクスは、かすかな記憶を頼りに【 浮遊都市バハ 】へたどり着きました。
そして、聖なる槍【 セイクリッド・キャノン 】にマナが満たされ、発射準備が完了したそのとき、
再びイーゴが登場し、強力なモンスターを呼び寄せ始めました。
モンスターの持つ強大な魔力が【 セイクリッド・ブラスト 】の発動を妨げています。
一体でも多くのモンスターを排除し、その発動を助けてください。
◆6/16の【 セイクリッド・キャノン 】防衛結果が発表されました。
DIAMOND・PEARL・EMERALDの全サーバがモンスターのせん滅に成功。
【 セイクリッド・キャノン 】の防衛に成功しました。
怪奇!イムサマス一家の踊らされる夏 †
仁義無き大運動会 †
神竜の封印〜ノアストーン開放の日〜 †
- 051216〜051217
- 第1期ストーリーイベント 完結編
- CAST
- ENOS、IGO、IRMINA、ORIAX、LUCE
●イベント概要
ある日、ダイアロス島の各地に、巨大なマユのような物体が出現した。
時を同じくして、姿を消すオリアクス。
ダイアロスの危機を察し、呼びかけて来るモラの賢者たち…
巨大なマユから産まれ出るのは、一体!?
賢者たちが課す、過酷な試練とは?
はたしてプレイヤーたちは、悪の魔導師イーゴからノアストーンを守ることができるのか?
イベント「オリアクスの帰還」から半年、Master of Epic開発スタッフが総力を挙げて贈る、
ストーリー・イベント第1期完結編『神竜の封印 〜ノアストーン解放の日〜』
乞うご期待!
■EVENT REPORT I
+
| | ※ストーリー
|
Scene.01 プロローグ
突如としてダイアロスの各地に現れた、巨大な物体。
イプス峡谷、レクスール・ヒルズ、アルビーズの森、ネオク高原…
一方、アルビーズの森の片隅で静かに日々を送っていたオリアクスは、マユの出現と時を同じくして、姿を消していた。
デスナイトの群れに襲われたという噂も流れているが、真偽は定かではない。
これからダイアロスに、何が起ころうとしているのだろうか…
イーノス: 私はモラ族の長老イーノス。 旅人たちよ。私の声が聞こえるか?
今、このダイアロスに、かつてない危機が迫っておるようじゃ!
各地に現れた、あの巨大な物体…
おそらく、邪悪なる魔導師イーゴの仕業に違いない。
・・・そう。
我がモラ族の出身でありながら、邪悪なマブ教へと魂を売り渡した、愚か者だ!~
彼は今や、恐ろしい力を持ったネクロマンサーとして、マブ教を完全に支配しておる。
イーゴの狙いは、イルミナ城の上空に繋ぎ止められた、魔法石ノア・ストーンに違いない。
すべての魔法力の源、ノア・ストーン・・・~
その力を奴が手にした時、世界は絶望に包まれるであろう。
だが、今のノア・ストーンは、女王イルミナの魔力によって、かろうじて結界に守られておる!
まだイーゴの手に渡ってはおらんのだ!
これからイーゴが、どんな手を使ってノア・ストーンを奪うつもりか・・・
それは、この私にも分からない・・・
・
イーノス: 大変じゃ! 今、各地を調べている我がモラの民から、連絡が入った!
先ほど、あのマユの中から、巨人のようなモノが出現したらしい!
…ついに、イーゴが動き始めたようじゃ。
オリアクス: へっへっへ…
さあ、誰でもいいから、かかって来いよ!
この巨人に、勝てると思うバカはな!
シシシッ!
イーノス: お前は、オリアクス!
再び、イーゴの元に戻ってしまったのか!?
オリアクス: やっぱり、イーゴ様のお力に、かなうヤツなんて居ないんだよ。
イルミナの結界を破るのが、このオリアクス様の役目だ!
イーノス: なんと愚かな…
お前はユンという少年を、身をもって救ったのではなかったのか?
オリアクス: あんなガキのことは、もう忘れたよ。
このオリアクスに逆らうヤツは、ひとり残らずブチ殺してやるぜ!
へっへっへ…
Scene.02 古代の記憶
イーノス: どうやら、あの巨人は恐ろしい強さを持っているようじゃ。
腕に自信が無いものは、うかつに近寄ってはならぬぞ!
各地で、勇敢な者たちが戦いを挑んでいるようじゃが、巨人は、次々に沸いてくる。
うーむ。
一体、どうすれば良いものか…
ザイオン: 長老イーノス…
わたしの話を聞いてくれませんか?
イーノス: お前は?
ザイオン: わたしは、古代の歴史を研究している、ザイオンという者。
あの巨人は、古代モラ族が作り出した、人型兵器なのです。
イーノス: なんと!
我らモラ族の偉大なる先祖が、生み出したものなのか…
ザイオン: わたしも詳しくは分かりませんが、イーゴは、その巨人を作り出す方法を、探し当てたようです…
イーノス: あの巨人が相手では、いかに勇敢な戦士たちでも、とても倒しきることはできまい…
ザイオン: そうでしょう。ただ、わたしも調べを進めています。
もう少しで、対抗手段を探り出せそうなのです。
イーノス: …そうか。とにかく何か分かったら、すぐに知らせて欲しい。
ザイオン: はい。それまでは、あの巨人には近付かない方が良いでしょう。
Scene.03 4つの卵
イーノス: 旅人たちよ! よく聞いて欲しい。
今、我がモラ族の4人の賢者の声が、時を越えて私の心に届いた。
「4匹の神竜を探し出し、我らの目の前までつれて来い」 と・・・
どうやら、その神竜だけが、あのマユを消し去る力を持っているらしい。
その神竜がどこにいるのか、賢者たちは語らなかった。
・・・お願いじゃ! まずは皆で手分けして、4匹の神竜を探し出してくれ!
どうやら神竜たちは、まだ竜の姿にはなっていないようじゃ。
・・・卵の段階にあるらしい。
旅人たちよ! 何とか4つの神竜の卵を見つけ出して欲しい!
・
既に4つの卵と4人の賢者は、ダイアロスの各地にその姿を現していた。
ミーリム海岸に、賢者シス。
ビスク港に、賢者ユグ。
イルヴァーナ渓谷に、賢者ソレス。
そして、ガルム回廊に、賢者ロザロト。
古代モラの賢者から、旅人達に試練が与えられた。
“神竜の卵を我の元へ”――――。
・
イーノス: さあ、卵を、賢者の元に届けるのだ。
くれぐれも、注意するのじゃ!
Scene.04 焦燥の果て
旅人達はモラの賢者の教えに従い、卵を導いた。
すべては、「ダイアロスを救うため」。
暗黒の闇からこの愛すべきダイアロスを救うため、旅人は賢者の元へと卵を導いた。
そして…
ひとつ、またひとつ…
…卵は賢者の元へと届けられた。
卵と共に到着した旅人に、4人の賢者達は静かに語りかけた。
よくぞ我が元までたどり着いた。
だが、まだ機は熟してはおらぬ。 今しばらくの忍耐が必要だ・・・
イーノス: これで、すべての神竜の卵が、賢者の元にたどり着いたのじゃ!
・・・ついに、神竜が目覚めるときが来たのか?
むう・・・ すべての神竜の卵が、賢者の元にたどり着いたのは良いが・・・~
賢者の姿は消え、卵も動かなくなってしまったようじゃ。
一体、どうしたものか・・・
・
オリアクス: 虫ケラどもが、必死の悪あがきをしているようだな…
イーノス: くっ! 出てきおったか。
まだ神竜が目覚めておらんというのに…
オリアクス: さて…
こちらも、そろそろ本気で行くとしようか。
古代の巨人、ノア・タイタンたちよ!
ダイアロスの空を、お前たちで覆い尽くすのだ!
イーノス: な、なんと!
あのマユから、数え切れぬほどの巨人が、空へ…!
オリアクス: へへへ… 1体でさえ、倒すのも大変な相手だ。
もう、お前たちに止めることはできないだろう。
加えて、精鋭のデスナイトたちも、ダイアロスの各地に向かっているところだ。
空には巨人、地上にはデスナイト…
さあ、どうする?
運良く生き残っていたら、指をくわえて見ているが良い…
ノアストーンが解放される、その時を!
イーノス: 何ということじゃ…
今は神竜の誕生を待つしか、すべは無いのか…
ザイオン: 長老イーノス。
遅くなりました…
イーノス: 戻ってきてくれたのは嬉しいが、遅すぎたようじゃ。
あのマユから、続々と巨人の群れが…
ザイオン: それは私も知っています。
ですが、望みを捨ててはいけません。
イーノス: しかし…
どうやって、あのノア・タイタンの群れを止めるというのじゃ?
ザイオン: …われらも巨人を作り出し、対抗するのです!
イーノス: な、なんじゃと?
ノア・タイタンを、作ることができるのか?!
ザイオン: あなたにお会いしたあと、わたしは研究を続けていた古代の文献を、ついに解読する事ができました。
イーノス: 長老である、このイーノスも知らぬ文献を、どこで手に入れたのじゃ?
ザイオン: …それは、訳あって申し上げることはできません。
ですが、どうか私の話を信じていただきたいのです。
かつて古代モラ族は、ノアストーンの力によって高度な魔法文明を築き、この地上を完全に支配していました。
しかし、その古代モラ族でさえ完全にノアストーンを制御できずに、滅亡したと言われています…
滅亡の引き金となる大戦の際に使用されたのが、あのノア・タイタンだったのです。
イーノス: それほどの力に手を出すのは、あまりに危険…
大人しく神竜の目覚めを待つべきではないか?
ザイオン: その神竜を待つ間にも、敵のノア・タイタンは、どんどん数を増しているのです!
ためらっている余裕はありません。
今のうちに、1体でも多くの巨人を倒すのです!
イーノス: うむ…
他に手立てはない以上、お前を信じるしかないな…
ザイオン: 建造に必要な素材は、あとでお伝えします。
集めた素材を、わたしが造った装置で融合させるのです。
ただし… 解読は完全ではないため、建造から20分後に、ノア・タイタンは自壊してしまうでしょう…
イーノス: なんと…
つまり、生きては戻れぬという事か?
ザイオン: そうです。
命を捨てる覚悟をした上で、乗り込まねばならないのです。
これから何が起こるのか、わたしにも分かりません。
今はただ… 行動するのみです。
・
ようやくモラの賢者の元に辿り着いた、神竜の卵。
しかし神竜は生まれぬまま、賢者たちは姿を消した。
一方、各地のマユからは、古代の巨人が続々と生まれ始める。
それに対抗すべく、謎の人物ザイオンより伝えられる、巨人の建造方法。
神竜は、本当に目覚めるのか。
そして、これから始まる戦いの行方は?
今、ダイアロスの空は、巨人の群れに埋め尽くされようとしていた…
− 第2夜に続く −
|
■EVENT REPORT II
+
| | ※ストーリー
|
Scene.01 勝利への希望
邪悪なマユを消し去るため、賢者の呼びかけによって集められた、神竜の卵。
しかし神竜が目覚めぬうちに、マユからは次々と古代の巨人が生まれ始める。
人々は謎の人物ザイオンの助けによって、対抗する巨人を建造して立ち向かった。
神竜の復活を信じ、1体でも多くの敵をせん滅するために…
激しい戦いで多くの命が失われたが、マユから生まれ出る巨人は、徐々にその数を減らし始めていた。
人々の心に、勝利への希望が芽生え始めていた。
あとは、神竜の復活を待つだけであった…
イーノス: 皆! よくぞ頑張ってくれた。
どうやらマユは、巨人の生産を停止しているようじゃ。
ザイオン: すでに生まれ出たノア・タイタンは、一部を残して、そのほとんどが破壊されたようです。
イーノス: ザイオンよ。 お前がもたらしてくれた情報のおかげじゃ。礼を言うぞ。
ザイオン: いえ、皆の捨て身の活躍のおかげです。
今はただ、神竜の誕生を待つのみ…
・
イーゴ: フフフフ… 虫ケラどもよ。なかなか往生際が悪いようだな。
だが、イルミナの祈りの力が、だいぶ弱まって来ている。
あの結界さえ消えてしまえば…
その時こそ、ノア・ストーンが解放される時だ。
あと少し… あと少しだ…
Scene.02 神竜の覚醒
突如、ダイアロス全土に激しい地響きが走った。
イーノス: こ、この地震は?
ミーリム海岸に風神竜ウィンド・ドラゴン。
ビスク港に、水神竜ウォーター・ドラゴン。
イルヴァーナ渓谷に、火神竜ファイヤー・ドラゴン。
そして、ガルム回廊に、地神竜アース・ドラゴン。
激しい地響きは、神竜の覚醒に因る大地との共鳴であった。
神竜は遂にその姿を旅人達の前に現したのである。
イーノス: ついに、神竜たちが目覚めたようじゃ!
これで世界は、救われるだろう!
各地の神竜は、マユに向かって進んでおるようじゃ。
途中で、何も起こらねば良いが…
まだ生き残っているノア・タイタンもおるじゃろう。
見に行く者は、注意が必要じゃ!
イーノス: 神竜は驚くべき力で、邪魔するものを撃破しておる!
あのノア・タイタンでさえ、まったく相手にならぬようじゃ!
Scene.03 未来へ…
4匹の神竜はそれぞれの目的地へと辿り着いた。
風神竜ウィンド・ドラゴンはイプス峡谷。
水神竜ウォーター・ドラゴンはレクスール・ヒルズ。
火神竜ファイヤー・ドラゴンはネオク高原。
そして、地神竜アース・ドラゴンはアルビーズの森。
神竜は威風堂々、邪悪なるマユと対峙していた。
ザイオン: 長老イーノス。
どうやら4匹の神竜すべてが、マユの前に到着したようです。
イーノス: そうか…
ついに… この時が来たようじゃ…
ザイオン: …さあ、神竜よ!
その力で、邪悪なマユを消し去ってくれ!
…閃光が走った―――。
誰もがその光に目を奪われ、一瞬の静寂がダイアロスを包み込んだ。
…目を開くと、たった今までそこに居たはずの、神竜も邪悪なマユも、そこには居なかった。
ザイオン: 神竜が・・・ あのマユと共に・・・ 消えた…
終わった… のか?
オリアクス: ・・・イーゴ様。
4匹の神竜が、すべて手に入りました。
ザイオン: 何だと!?
オリアクス: 神竜の力があれば、イルミナの結界など、薄氷に等しい。
最初から、この力が欲しかったんだよ!
まさか、お前たちが巨人の建造方法を探り当てるとは思わなかったが…
すべて、我々の策略どおり…
…そうですよね?
イーノス様。
ザイオン: なにっ?
イーノス: …うむ。 よくやった、オリアクスよ。
ザイオン: 長老イーノス?
…あなたは、わたし達を、裏切ったのですか!?
イーノス: 許して欲しい。
こうするしか、なかったのだ…
4匹の神竜の身体が、必要だったのじゃ…
「私たち」の目的のために。
オリアクス: あのマユは、巨人の製造器なんかじゃない。
神竜たちを、「次元の歪み」に封じ込めるための、罠だったんだよ!
ザイオン: では、あの賢者たちは… ただの、幻影だったのか?
オリアクス: まあ、そんなところだ。
モラ族の長老の言葉に、疑いを抱くヤツは居ないだろう?
ザイオン: イーノス! モラ族の長老である、あなたが…
…自分のした事が、分かっているのか!?
イーノス: 今は… 話している時間は無いのじゃ…
オリアクス: ここを去る前に、死を待つだけのお前たちに、良いことを教えてやる。
しばらくの間は、神竜を捕らえた「次元の歪み」の入り口が、開いているだろう。
その中に、飛び込んでみるが良い!
運が良ければ、面白い「未来」が拝めるかもしれないぜ?
ただし、言っておくが…
無事に戻って来れるかどうかは、俺の知ったことではない。
では我々は、ここで失礼するとしよう。
行きましょう… イーノス様。
イーノス: ………そうだな。
・
ザイオン: 何ということだ…
まさか、長老イーノスが…
あの男は言っていた。
「次元の歪みに入れば、未来が見えるかもしれない」と…
わたしは、この時代で奴らを追う。
無事に戻れる保証はないようだが、勇気ある者は、ダイアロスの未来を…
見届けて欲しい・・・
イーノスとオリアクスを追うザイオン。
そして「ダイアロスの未来」を見届けるために、“無事に戻れる保障はない”という「次元の歪み」に、自ら飛び込んで行く旅人達――――。
ザイオンの命運は………?
旅人達の安否は………?
果たして、ダイアロスにはどんな未来が待ち受けているのか………。
|
■EPILOGUE
+
| | ※ストーリー
|
イーゴ: 聞くが良い!
今まさに、イルミナを討ち取ったところなのだ!
イーゴ: もはや邪魔者は、完全に居なくなった!
石を繋いだ鎖は断ち切られ、ノア・ストーンが解き放たれる!
これまで誰も引き出すことの出来なかった真の力を、この私が手に入れるのだ。
見よ!
イルミナ城は、完全に消え去ったぞ!
これこそが、ノアストーンの力!
オリアクス: 素晴らしい力でございます。イーゴ様。
イーゴ: 神竜を手に入れ、ノアストーンを解放した今…
わが為すべきことは一つ!
もはや、この時代には用は無い。
オリアクスよ! この時代は、お前にくれてやる!
好きなように、虫ケラどもを血祭りにあげるが良い!
オリアクス: 承知いたしました…~
あとは私に任せ、安心してカオスエイジへとお向かいください。
イーゴ: フッフッフ。頼んだぞ…
オリアクス: さて…
生き残っているクズどもを、どう料理してやろうか…
ザイオン: もう、その位にしておけ… オレのニセ者が!
オリアクス: お前は!
ザイオン: イーゴは、バハで俺の体を複製していたようだな。
もっとも今のオレも、バハで復活したニセ者みたいな存在だがな…
だが、この心は、本物のオリアクスだぜ!
偽オリアクス: …ちっ。
我らの刺客に追われ、どこかで野垂れ死んだと思っていたが、生きてやがったか。
オリアクス: イーゴは逃がしたが、お前だけは逃がさん!
さあ、悪い子がこれ以上おイタをする前に、お仕置きと行こうか。
偽オリアクス: へっ。返り討ちにしてやるぜ!
偽オリアクス: …うわっ! 何をする? 放せッ!
オリアクス: おとなしくしてろ!
ニセ者はニセ者同士、仲良くしようじゃないか。
偽オリアクス: オ、オイッ! 一体、どこに連れて行く気だ?
オリアクス: いいから、ちょっと付き合えよ!
オレたちは、ここにいちゃいけない存在なんだ。
もう間違っても復活しないように、完全に消え去ろうじゃないか。
…あの太陽に突っ込めば、跡形もなく溶けちまうだろうよ!
偽オリアクス: ひいいッ! 助けてください、イーゴ様!
オリアクス: 親分は、もうカオスエイジに行っちゃったんだろう?
お前の事なんか忘れてるぜ。
偽オリアクス: やめろッ! お前は、どうかしてる!
オリアクス: ヘっヘっヘ… そうかもな。
オリアクス: みんな… オレの声が聞こえるか?
せっかく助けてくれたのに、ろくな恩返しができなかったな。
許してくれ。
オレを慕ってくれた暗使の野郎ども!
今のボスの元で、しっかり働けよ…
オリアクス: それからルーチェ… いろいろあったが、楽しかったぜ。
お祈りばかりしてないで、早くイイ男を見つけろよ。
偽オリアクス: 放してくれーッ!
オリアクス: いま行くぜ、ユン…
イルミナ: 旅人たちよ。 私の声が聞こえますか?
私はイルミナ… 肉体は滅びても、意識はここにあります。
ノアストーンが解放された影響で、時空間が非常に不安定になっています。
このままでは、あなたたちは どこに飛ばされるか分かりません…
・
― カオス・エイジ 天の門 ―
イーノス: イーゴよ。 本当に、これで良かったのか…?
イーゴ: この期に及んで、まだ迷っているのか?
ノアストーンの力と神竜の肉体があれば、我らは神となる!
イーゴ: 古代モラ人が追い求め、かなわずに滅びた力。
…その力を、我らは手に入れたのだ!
イーノス: お前は、もう一人の私… この私の、別人格じゃ。
お前は、私の中の邪悪なる存在なのか?
イーゴ: いや、本当の姿だ。 …この私を見ろ!~
これが、かつて世界を支配した、モラ族の本当の姿だ!
イーノス: …む!?
どうやら、この地に迷い込んできた「意識」があるようじゃ。
…私が助けた、旅人たちのようだな。
イーゴ: フフ… 所詮は、時空をさまよう意識に過ぎぬ。
やがて、どこかに消え去って行くだろう。
イーノス: 旅人よ… お前たちに言っておきたい事がある…
かつて、流れ着いたお前たちを助けたのは、決して利用するためではない。
私の中に、希望を託す気持ちがあったのかもしれん…
この私を、止めて欲しいという希望を…
イーゴ: 愚かなことを… この虫ケラどもに、何ができるというのだ!
イーノス: 今でも私は、助けたのが間違いだとは思っていない。
この者たちには、世界を変える力が眠っておる。
どちらの方向の世界にも、変えることができる力だ。
…だが、ここに私は、神となる道を選んだ。
イーゴ: 善きものも、悪しきものも…
すべてを無の中から創り出す存在だ!
イーノス: この選択が正しかったのか、私が神にふさわしいのか、それはお前たちが見届けるが良い…
イーゴ: 次に私たちに会う時は、神の力を思い知る時だ…
その覚悟があるのなら、再びここを訪れるが良い。
…フッフッフ。
イーゴ: 見よ!
すべての力を手に入れた、私たちの真の姿を!
・
イルミナ: 旅人たちよ。~
時空のゆがみが、収束し始めました…
あなたたちは、あのマユが現れる 直前の時間へと、戻されるでしょう。
そこは、わずかな希望が残された世界。
この災いが、まだ起こっていない世界です…
決して諦めてはなりません!
未来は、必ず変えることができます。
必ず…
|
Master of Epic [ 神竜の封印 〜ノアストーン解放の日〜 ] Fin